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「むかしむかし、あるところに???」
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「むかしむかし、あるところに???」
俺は面倒になって、彼の手を離しベッドに潜った。今から寝かしつけられる子供みたいだなって自分で思った。
「やめろ、話しづらいだろが。」
彼もそうやって俺の冗談を流すが、ちゃんと布団を上からかけてくれるし、俺の頭を撫でて、本当に寝かしつけるつもりなのか流石に俺も心配になった。
17年前も100年前も生まれてないから同じでしょ。って言ったら、それはそう。と笑いながら納得してくれたが、大事な話だから茶化すのはそこまでな。って止めらてしまった。
つまんないの。
「どこから話せばいいのやら...。ああ、そうだ。スパイの正体は誰か分かるか?」
お兄さんは意地悪そうな顔をして俺の頬を軽くつねった。
「おおよそね。俺の兄貴は確実黒でしょ。それと多分、俺の担当看護師さんとか、、、だったら怖いね。」
ほら、なんかよくありそうじゃん、映画とかドラマとかでさ.........いや、ないか。俺の妄想だけかも。と付け足して言ってみるとお兄さんは変な奴だな。って俺の頬から手を離して一息ついてから話し始めた。
「お前の兄貴とは幼馴染なんだよ。知らないと思うけど。」
うん、知らない。そうだったんだ。って俺が反応すれば、そうだよ。って反応薄いって、困ったように笑われた。
俺と兄は仲良いけど、お互いのプラベートな話は全然しないから、殿の人間関係とかほんとに微塵も興味なかったりするんだよね。
そう考えると案外、クールな関係なのかも。
「兄貴は俺に対しては秘密主義だから。」
だから例え、女遊びが激しいとか、ギャンブルが好きだとか、人に言えないような癖があったとしても俺はあんまり驚かないよ。って続けて言えば、
彼は何を思ったか、お前の兄貴はお前を裏切るようなことは一切しない奴だよ。って笑われた。
別に殿のことを信用してないとか、信用に足らないとか、そういう事を言いたかったわけじゃないんだけど……まぁそう捉えられても仕方ないか。今の言い方は感じ悪かったよな。
「俺のこと大好きだからな〜。」
俺は殿の事をほとんど知らないが、弟をこの上なく可愛がっていることは身をもって知っている。
「だから、杜夢のこともずっと前から知ってた。好きなものも、嫌いなものも、今ハマってるものも、欲しいものも、全部話してた。」
その後、あの頃はこれが好きだったとか。
ピーマンが嫌いでこっそり兄貴に食べてもらってたとか。
誕生日プレゼントを一緒に買いに行ったとか。
部活の試合を見に行ったとか。
勉強でもわからないことがあれば、兄貴は俺に聞いてきて弟にでも分かるように説明しろと言って来たりとか。
そんな諸々の事を話されて何だか小っ恥ずかしくなった。知らないところで見られてたなんて何だか不公平だとも感じた。
その中で一つ懐かしく感じた出来事があった。
「そういえば、杜夢が小3の時に1日家に帰らなかったことがあっただろう。両親も仕事の都合で家にいなくて、その時、俺も駆り出されて一緒に探し回ったんだよな。」
そんなこともあったか。とあの時のことを思い出そうとして......「ちょっとトイレ。」と俺は冷静になりたくて彼の元から離れた。
この出来事には分厚く、重い蓋をしていたことに今気づいた。
「そっか。」
誰に言ったわけでもない。ただ口から漏れた一声だった。
あぁ、何だか思い出してきた。
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