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「シリアスは終わりんちょ」
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「シリアスは終わりんちょ」
未だ、俺の背中をさすって申し訳なさそうに俺の様子を伺う誠さんに俺はふざけて言う。
「うん。誰にも言わない。」
なんなら誓約書でも書いてやろうか?って真剣な目付きで言ってくるのが、なおさら面白い。
うん。気まずいね。
ってことで俺は早々に話題を変えたくて無理やり映画の話をすることにした。
映画のことなら何だって語れてしまう、俺の得意分野だから。
「俺が映画好きって兄貴が言ってたの?」
お前が自分で言ってた。最近は映画して見てないやって。
なに?覚えてないの?って聞いてくる彼に俺は、あー、、、そだっけ?覚えてないや。って首をかしげた。
しんどくなってきた。流石に本調子じゃないし、なんか色々あったし、一気に疲れが押し寄せてきた感じが...。寝ようかな。
まぁ出会ってすぐの頃だったから1年以上も前のことだしな。って考える仕草をとった彼に俺はどうしても疑問を持ってしまった。
「もしかして、俺との会話全部覚えてたりする?」
俺は恐る恐ると言った様子で聞いてみた。
ついでに枕を腰の辺りに移動させて、楽な姿勢で、というかいつでも眠れる状態にして会話を続けることにした。誠さんには非常に申し訳ないけど。
モゾモゾ動く俺に何かを察知したように一度立ち上がって俺に手際よく布団を被せて「眠たかったら寝てもいいから」って何でもない事のように言う彼に寂しさを覚えた。
俺そんなことしない。
そんなわけあるか。たまたま覚えてただけでそこまで高性能に作られてねぇよ。って鼻で笑われた。
その笑い方、解せぬ。
「ああ、そこはゲームと同じなんだぁ、良かったよ」
少し小馬鹿にした感じに言えば、減らず口が…。てほっぺたを軽く引っ張られた。
痛い痛いって対して痛くもないのに少し大袈裟にヘラヘラしながらふざけ合っていたら見覚えのある姿が視界に入ってきた。
「仲が良いのは結構。でもそいつ病人な。」
お、兄ぃー!
スーツ姿で現れた殿に俺は元気よく振る舞った。
殿と会うのは本当に久しぶりかもしれない。年始に一度だけ姿を見たが、特に話すこともなく、少しの食料だけを置いて行ってしまったから忙しいもんだとばかり思ってた。
ほっぺたから手が離れて殿に今の場所を譲ろうとする誠さんをがっしり捕まえてニタって笑った。
それを見てた兄殿がいつまで引っ付いてんだ、いい加減離れろよって呆れた様子でテーブルにコンビニの袋を丸ごと置いた。
「誠さんが一生離れるなって言った」
俺は不貞腐れたように、悪いのは全てこのお兄さんですって彼の方を見た。
俺が発言した瞬間に空気がピシャって凍りついた。
それが想像を遥かに超える面白さで俺は笑いを堪えきれずにクスクスと静かに笑った。
帰れよお前。名前で呼び合うほど仲良くすんなよ、俺の弟だぞ。って殿はふざけてずっと彼のことをなじった。
さすが俺の殿様だ。兄の性格を忠実の受け継いだ自分が誇らしいよ。
「……言ってねぇだろ」
俺と殿を交互に見てから深いため息をついてうんざりと言った表情で静かに放った。
俺はそれがあまりにツボだったので腹筋が割れるくらい笑った。
退院したらお前の行きたいところ連れてってやるよって普段は絶対にそんな事言わない殿が言い出した。
でも俺はこんな時でも眠くて、夢心地だった。
「うん。病院以外ならどこだって行きたいよ。」
ごめん、俺寝ていい?って答えが欲しかった訳でもないので、そのまま布団に潜り込んで寝る体勢に入った。
明後日、俺は家に帰れる。
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