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『空は青く、ハゲは寒い』
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『空は青く、ハゲは寒い』
無事に退院できた俺は、久しぶりに制服を着て学校に行った。
いつもより厚着をして、ニット帽も被って、薬も持って、いつもと違う感覚で学校に行った。
『退院おめでとう。ハゲてなくても今日は寒い』
そう、気づけば2月。
1ヶ月と少しくらい入院したことになる訳だが…何だか代わり映えしない風景に俺は安堵のため息をもらした。
教室に入れば、仲のいい連中がどこからともなく群がって来た。
なんだか、この感じも懐かしいな。
お前見ないうちにハゲてんじゃん。ってみんなに言われた。
驚いた顔とか、馬鹿にした声が、素直に嬉しかった。
戻って来たんだなって、俺の知ってる日常に......。
だから死ぬほど嘘をついた。もう生きれないから、許しを請う暇もないから、だからいいよね?
「年末年始に人生ゲームしてさ、負けたからハゲた。」
「お腹痛すぎて検査入院したんだけど、1週間放置した弁当食ったのが原因だったわ。」
俺がつく嘘にみんなはゲラゲラ笑って茶化してくれたけど、多分何人かは嘘だって気づいてんだろな。
ほら、授業中なのにスマホが光った。
中学からずっと仲のいい友達、俺が出会った友達の中でも3本の指に入るほど信頼してる友達から。
なんか困ったらいつでも言いな。って
かっこよ。イケメンかよ、俺と結婚するか?って心の中で思いながら二つ横の席に居る奴にアピールしてたら先生に怒られた。俺じゃなくてあいつが。
そんなこんなで迎えた昼休みは食堂で各々昼食を摂り、教室に戻って盛大に復帰祝いが開かれた。
もちろん男子限定だったけど。
そんな騒ぎまくってる教室に一人の来客が見えた。
俺の知ってる顔なのに、なぜか女の制服を着てた。
割と有名なようで、賑わっていた男子諸君がざわざわしだしたが、対照的に教室にいた女の子たちはそれぞれ親しげに挨拶を交わしていた。
.......あれ?女の子だったの?ん?
俺の存在に気づいた美少、女?はパッと花を咲かせて俺に向かって手を振って近付いてきて正直恐怖を感じたよ。
こんな周りに野郎しかいないど真ん中に堂々と入ってくんだもん。怖いよね?ほら、周りの男子も完全にビビって小ちゃくなってんじゃん?
「君、女の子だったの?前会った時はズボンはぃ......「ストップ!!」
クラスの男子から口を押えられ、慌てたように言葉を遮られた。
訳が分からず、されるがままの状態の俺を笑顔で見つめる美少女が明らかに男らしい野太い声で「退院おめでとう」と言って来た。
「ありがとう。ロングの髪型も似合うね。」
「でしょ?でも心も体も男だから。」
連絡先、交換しようよ。ってスマホを差し出されて素直に応じた。
俺は思い出したように友達記念にジュース奢るよって言って騒いでた仲間を置いて教室を出た。
「そういえばお母さんの体調はどう?」
「......うん。悪くはないよ」
あぁ、隠すのが上手だなって思った。
よっぽどの無神経じゃなきゃ、話を掘ろうとは思わないだろうから。
微妙な反応を見て、俺はそれ以上話す気にならなかったからなんとなくあの時のことを聞いてみた。
「あの時さ、ちゃんと帰れた?」
「うん、お陰様で何事もなく帰れたよ。君はどうなったの?」
自販機にお金を入れて好きなのを選ぶよう言った。
午後からの授業はさすがにしんどいから帰ろかな。なんて事を考えて、機嫌が悪くなった空を窓越しに見た。
「普通にボウリングして、猫と遊んで帰ったかな。」
「ふふっ。それが本当なら楽しそうじゃんか。」
本当に女の子見たいだな。って思った。
笑った時の仕草とか、綺麗に上がる口角とか、なんかキラキラしてる感じが本当に女の子らしいと思う。
「楽しかったよ。」
俺も水だけ買って、再び教室までの廊下を歩く。
そしてお互いの中間地点で立ち止まって話を続ける。
「また教室遊びに行っていい?あんまり男友達いなくてさ、、、なんなら女の子紹介してあげるよ?」
少し寂しそうな不安気な表情と、さっきのクラスメイトの反応を思い出しあんまり人間関係が上手くいってないんだなって感じた。
俺は面倒じゃなければ誰とでも仲良くするし、相手がどんな趣味趣向をしていようとも、人間としてクズじゃなければ全然許容範囲内でっせ。
「あ〜、そういうのいらないかな。普通に遊びに来なよ?
なんなら男の子紹介してあげるからさ。」
俺はキッパリと断りを入れてから冗談めかして言った。
彼が言った言葉はあまりにも無神経だと分からせるためにちょっと意地悪した。
ジュースありがと。また遊びに行くからね。って彼は心底嬉しそうに姿を消した。
うーわ、何今の……かわゆい ものごっつかわゆいぞ!!
『やっぱ冬はええな。』
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