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「じゃね!」
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「じゃね!」
人が栄える駅前で俺たちは別れた。
誠さんはまた調子が良い日に映画を見に行こうと言ってくれた。
俺はこれからとある人物と会う約束がある。
トークアプリを開いて『ゆう』と記された人物に『着いたよ』と一言メッセージを送った。
すると横から女装をした『ゆう』が俺の背中を叩いた。
そう、あの美人な男の子の名前は日下部 優と言うらしい
「おはよ!元気?」
朝じゃないし、なんなら夜だし。
それでも俺も同じように、おはようと挨拶をした。
「今日は女の子なんだ。可愛いけど寒くない?」
優の格好になんら疑問を抱かず、でも夜にしては寒そうだった。
「大丈夫、ありがと」
優はにっこり笑って、アウターのポケットに両手を突っ込んだ。
寒いんじゃん。って笑って言えば、そんなもん。だと優は言った。
優は、行きたいところは大体決まってるから。と手を引かれるように人並みを抜けていく。
行き慣れてるんだろうな。って感心した。
周囲の通行人が優を見て振り返ってるのが面白くて、俺も女装しようかなってちょっと思った。
着いたお店はハイブランドのお店で優はしきりに、鞄やネックレス、ブレスレットを見ていた。
そうか、もう春だから。
色んなものが新しくなる時期なんだなって、当然のことに驚いた。
俺も何か買おうかなって、アクセサリーを見てたら殿に似合いそうなピアスがあって、手にとってみた。
殿はピアスの穴が空いていたはずだから、買ってあげようと思った。
あ、ちなみに今更だけど、殿の名前は隆景。
俺が隆景を殿と呼ぶのは、その名前が武将の名前だから。
小さい口に隆景は言いづらいと言うこともあって殿って呼ぶのが口に馴染んでしまったのが大きな要因だけど。
殿は俺のことが大好きだから、何をあげても喜んでくれるだろうけど、いつもよりちょっとだけ高価で使えるものをあげようと思って、丁寧にラッピングしてもらった。
ハイブランドでの買い物は初めてに近いこともあってか緊張した。
寒いから温かいものでも食べて帰ろうってなって最近できたスープの専門店でゆっくりすることにした。
女の子ってこういう情報に敏感だよね。って何も考えずに言ったら「女の子じゃないけどね」って普通に返されてハッとした。
そういえばそうだね。って言って笑い飛ばしたけど。
あぁ気まづ。
優にお母さんの容態は聞かなかった。
でも優の方から話してくれた。
「アル中なんだよ。もう近々退院するんだけど、施設に預けようか相談中。でもお母さんは何が何でも帰るって言って聞かないわけ。もう家族やめたい」
「まぁ......わかる」 特にお母さん側の意見に。
「...死ぬほど頑張ってるんだな。」
誰とは言わないけど、何とか言えないけど。
どうしてこうも他人が絡むと上手くいかないんだろうな。
「どうだろう、そんなこと初めて言われた。」
「大丈夫だよ。どーせいつか死ぬから。」
俺は笑って冗談を言ってるみたいに言ったけど、優は不謹慎だと少し怒ったように見えた。
それじゃ。ってお互い家路に着いて初めて解放されたとため息をついた。
俺も何がなんでも帰らなきゃなぁ、、、なんて。
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