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『幸せって言うんだよ?』
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『幸せって言うんだよ?』
優と別れた後、俺は一人で家路に着く。
遊び疲れた。その一言に尽きる。
ただ、その疲れには満足感がある。
『お帰り。なんで幸せ?』
ずんっと重い体がふらふらと力の入らない足が注意喚起を鳴らす。
それでも俺は家に帰りたくてゆっくりと歩みを進める。
もう春だと言うのに、ここら一帯は寒空のまま、冬に置いてかれたようだと思ったけど、それも悪くないなって思った。
『ただいま。』
『素敵じゃん?だから幸せって言い続けて。』
薬指がやけに冷たいと思ったら、そうか今までなかった指輪があるんだな、なんてことを思ってニヤけた。
俺たちは嘘をついてきた。
それを大切な約束事みたいに守ってきた。
『相変わらず不思議な奴』
『俺は幸せだよ?』
ずっと先に点滅している赤信号が見える。
誠さんが乗ってた車と同じ車種の車が横切ってくのを見た。
幸せだと思った。
街中にあるどうでも良いものを見て、愛しい人を思い起こすなんて...
あぁ、なんてロマンチックな夜なんだろうか。
ここにいる。ここにある。
『知ってる
だからずっと幸せでいて』
家までの道のり、最後の青信号を渡ったとき、目の前が真っ白になった。
『お前は?』
そんなこと......聞くまでもない
長い夜の中、俺は眩い光を目にした。
もう、サヨナラかな?
もう、会えなくても平気?
もう、悔やむことはない?
もう、頑張らなくていい?
もう……やることはやったよね?
大丈夫。
みんな俺なんかよりよっぽど強くて、
逞しい人達だから。
みんなを置いていっちゃう俺が言うのは無責任だけど。
でもきっと幸せだから。
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