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1日
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ー世良 隆景ー
昨日、というか今日…弟が他界した。
溜まりに溜まった有給はこの日のためだったんじゃないかなんて、そんな事でもイラっとくる。
まだ死んで1日も経ってないのに、理解するには十分すぎるほど時間が過ぎたように感じた。
久しぶりに弟の部屋に入った。
この部屋を訪れたのは、もう何年も前だ。
俺もあいつも思春期があって、歳も離れてたし、正直仲が良いってのは人の目がある時だけだったようにも思う。
それくらい、俺と弟の間には距離があった。
俺と違って物が少なくて、家具や小物に統一感がある。
ずっと変わらなかった芳香剤の爽やかな香りに眩暈がする。
変なところだけこだわりが強くて…本当に厄介な奴だった。
弟の誕生日に一緒に買いに行ったデスクに座って初めてそこに手紙が置かれてあることに気づいた。
それだけじゃない、デスクに丁寧に並べられたノートを引っ張り出すと『山田 誠』と記されたノートが何冊か出てきて、呆気にとられてしまう。
二人がどういう関係だったのかは知らないが、俺の知らない二人の関係があると思うと、どうにも寂しく思った。
しばらく、ノートを開くべきかそっとしておくか、悩んで紙袋に誠宛の手紙と一緒にまとめて入れた。
死んだ人間にも守られるプライバシーはあるだろう…。
いつかの誕生日に俺が買ったスピーカーとスマホを繋げて、プレイリストから『弟選抜』と書かれたフォルダを選んで、似つかわしくない元気で激しい曲調のロックが小さく流れた。
2、3曲適当に流してから意を決して自分宛の手紙の封を開けた。
俺は弟について、知らないことがある。
それがなんとも複雑な気持ちにさせた。
俺は弟とどんな話をしたっけ?
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