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8日と1頁
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ー山田 誠ー
残業のない土曜日は午前中で帰宅することができた。
以前、杜夢と訪れたことのあるご飯屋さんで昼食をとって手帳型のノートを鞄から取り出した。
「山田誠 01」と油性ペンで書かれた表紙を見つめる。
昨日受けとった「死人の私物」の中身は、手帳型ノートが3冊、封筒が一つ、A4ノートが2冊だった。
まったく...なんでこいつは、こんなに気疲れするようなことをさせるんだ。
深く考える前にパラッと1ページ目を見た。
横に羅列された文字を見て、俺よりはマシな字だなって笑いが込み上げた。
日記...だ。
日付のない日記のくせに、始まりは「昨日、」であること、
それがいかにも、あいつらしくて笑えた。
ただ、表紙に俺の名前があるだけあって、俺はこいつが言う「昨日」に思い当たる節があった。
テーブルに伏せていたスマホからカレンダーをみてみる。
俺たちが色んな約束をした日だよな。
ずっと昔から杜夢のことは知っていて、本当に歳のわりに落ち着いてる子だなって印象があった。
仲良くなってゲームとか映画を見るようになったのは杜夢が中学2年になったタイミングだった。
何がきっかけかは正直覚えてないけど、懐かれるのは嬉しかったし、可愛いとも思った。
俺が杜夢に惹かれた一番の理由は、何に対してもあまりに真面目すぎて、物事の見方や考え方が敬意を示したくなるほどにおもしろかったから。
大学の授業なんかよりも面白くて、興味深くて、ずっと聴いていたいと思えるほど時間が一瞬に感じた。
あいつの言うこと成すこと全てが微笑ましかった。
ずっと近くで見守ることができたらいいのに。って今更のように思い出して、忘れていたことすら気づいていなかった。
そのくらい、あいつが書いた「昨日」から時が経ったんだろう...。
「
昨日、映画をみた。
隣にスーツを着た場違いな社会人を置いて。
生まれ変わってもまた君を好きになる。って主人公は言ってたけど、
そんなこと本当にあり得るのだろうか?
仕事終わりにスーツで場違いな場所にきて、隣に未成年置いて、
そんなことお構いなしに映画に集中して、堂々と肘置き占領して、
時々ふっ。って鼻で笑って、、、それすらおかしくて隣にいる俺のが恥ずかしくなる。
そんな面白い人、絶対いない。
だから好きなんじゃん。
この映画の主人公には共感できないな...。
今の関係は、今の俺と今のこの人でしか成立しえないと思うから。
」
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