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平穏な日々が続いる。身体には傷が残っているけど、それはたぷり愛された証拠でもあって、最近は優しく撫でられたりキスされたりもしている。だから、心はとても安定している。
今日は熱もないので、静かに部屋で本を読みながら過ごしている。
そんな穏やかな日は見張りの人もこの部屋には居ないみたいで静かな無音が続く。
ドアが閉まってしまえば、防音されているこの部屋には何も聞こえないが、最近は僕が本を読み出すと鍵がかかることもなく、ドアも開きっぱなしだ。僕に逃げる意思がなく、逃げれるほどの体力がないと判断されているからだと思う。
本が読み終わる頃に、急に外が騒がしくなった。聞いたことのある声、多分、吉野さん?の声が聞こえてくる。
その声はとっても焦っていて、「部屋に居ません」とか「さっきまでは拗ねて寝てた」とか言う声がする。
しばらくバタバタと外が騒がしくなったと思ったら今度は、静かになった。
そんな外の様子が気にならないといえば嘘だけど、僕には関係ないからと終わりかけの本にまた目を落とす。
それからしばらく時間が経ったとき、パタパタと足音がした。視線を音の方に向ける。
「あっ、見つけた!君がポチ君だよね?」
とっても可愛い男の子がルンルンという効果音がよく似合う感じで、こっちにやって来る。
「えっと、そうだけど……」
突然のことに僕が戸惑ってるのなんてお構いなしに、その子は嬉しそうにベットに近づいて来た。
「はじめまして、俺は幸夜といいます。先生、えっと、瀬尾先生がここに来たらきっと気の合うお友達に会えるって教えてくれて、だから来ちゃった」
「瀬尾さんが?」
瀬尾さんが紹介してくれたのなら、確実に気の合う友達になれるのだろうと謎の確信を得て僕はホッとする。
「そう!此処の場所教えてもらったから、こっそり抜け出して来た。先生には霜時さんにおねだりすると良いって言われてたけど、喧嘩しちゃったから言わずに来ちゃった」
そう言いながら、幸夜くんはベットに腰掛ける。
「ずっと、部屋に居たから暇で暇で死にそうだったんだよ!だってね、霜時さんね、ずっとお仕事だもん」
人懐っこい笑みで幸夜くんは話続ける。
「ポチくんはなんでここに居るの?」
「えっ、あ」
その瞬間に察してしまった。
この子が、奏夜さんのお父さんの想い人だと。
最近、奏夜さんは僕を愛してくれた後、僕が意識を保てたら色々話しをしてくれるし甘い時間を与えてくれることも増えた。
奏夜さんの生い立ち的なことは、ざっくりしか知らない。けど、母親のためにここに来て、でも、その、母親は死んでしまった。それも自殺だったらしい。奏夜さんは自分に訪れた不幸の根源は父親とその愛人だと。おそらく、その愛人が彼であると察しがつく。それがでも、目の前にいるその人は、僕が思い描いていた人物像とは全く違う。
とりあえず、質問に答えないといけないと思い立った僕は、ちょっと前に瀬尾さんが用意してくれた答えを答える。
「僕は、好きな人がここに居てって言うからここに」
その時は意味がわからなかったけど、瀬尾さんは幸夜くんが遊びに来る事を想定して、僕に仕込んだんだろう。
「偉い!俺も霜時さんに、部屋で大人しく留守番しろって言われてるけど、暇で我慢出来なかったもん。聞いてよ、昨日なんかね、霜時さん今日は休みだから一緒にいてくれるって言ったのに急な仕事って出て行ったんだよ!酷くない??」
幸夜くんが、あんまりにもコロコロ表情を変えながら話すから、本当は恨むべき相手かも知れないのに自然と僕は笑ってしまった。
「えっー、なんで笑うの?」
笑ったことに対して不服そうに幸夜くんが言う。
「ごめん、あまりにも表情が変わるからなんか和んじゃって」
「まぁ、いいけど。てか、こっそり抜け出して来たんだけどさ、怒られちゃうの嫌だな。悪いのは向こうなのに、理不尽だと思わない?」
「事情は分かんないけど、みんな心配して探してたみたいだよ?」
さっきの騒ぎはこの子を探していたのだろう。この子が、ここに居ることで自分達が被害を被るのではないかと少し不安になる。
「うーん、皆んなには悪いとは思うけど、霜時さんが悪いんだもん」
そう駄々を捏ねる幸夜くんは可愛くって、さらにそう駄々を捏ねれる幸夜くんは皆んなに愛されていて、このくらいの我儘は許される存在なんだろう。
僕は、諭すように幸夜くんに言う。
「じゃあ、霜時さん?だっけ、もし、その人と会えなくなったら嫌じゃない?きっと霜時さんもとっても悲しい思いしてると思うよ?」
「でもさ、なら、少しくらい、僕にも自由くれていいと思わない?」
「うーん、それはそうかもだけどちゃんと話し合ってみたら?」
初めて会ったけど、幸夜くんと僕の境遇は多分似ている。好きな人と居たいだけ。それがたまたま、奏夜さんを不幸にしてしまったのだろう。そう解釈する方がしっくりきた。
僕と幸夜くんは似ているけど、立場も状況も違う。それでも、瀬尾さんが言ったように、いいお友達に多分なれる気がした。
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