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side:奏夜
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side:奏夜
けたましい音とともに島田が戻ってきた。
「状況が変わりました。奏夜さん、そこで見ててください」
声はいつもと変わらず、それでも少し苛立った様子で島田がナイフを手に取る。
「瀬尾、一度しか問いません。幸夜さんは何処ですか?」
瀬尾の目が見開くが、それは一瞬ですぐにいつもの様子に戻る。
「幸夜、抜け出したんだ……そっか」
幸夜……親父のペット。居なくなったのか?
さっきの電話はそれか。
そして、その手引きを瀬尾がしたと疑われているってところか。
状況を察して俺は考える。
この瀬尾の反応は白だろう。
手引きしたなら、一瞬の驚いた様子が演技になる。それなら取り繕う必要はない。
「瀬尾、私の問いにだけ答えなさい」
その言葉と共に容赦なくナイフが瀬尾の太腿に振り下ろされる。
「……ぎっ、いっあ」
押し殺した瀬尾の声が響く。
島田があの取り繕いに気づかない筈はない。
それでも、なお詰問するのは何故だ?
「っ……手引きして、っ…ない、知らない」
瀬尾の声に余裕も無ければ、嘘をついているようにも見えない。
「ちっ、貴方を過大評価してました。もっと分かりやすく質問してあげます。貴方は幸夜さんに何を入れ知恵しましたか?何処にいるか見当がついているのでしょう?」
「知らっ……」
知らないと言おうとした瀬尾に対して、島田がナイフで太腿を抉る。
「もう少し聞き分けが良いと思ってました。私は貴方が幸夜さんの居場所に目星が付いていることに確信を持ってます。何故かまで説明させたいですか?」
島田がナイフから手を離し、かわりに瀬尾の顳顬に銃を突きつける。
瀬尾は焦ったように口をパクパクさせる。
脅しなんかじゃなく、下手をすれば迷いなく引き金を引かれるであろう恐怖に怯え声が出ないのだろう。
さっきまでと比べ物にならない緊迫感が遊びは終わりであると如実に告げている。
「声が出ないくらい怯えるくせに何故貴方はおいたが辞めれないんですか?全く、お仕置きは後でたっぷりするとして殺さないであげるので早く言いなさい」
血が出るほど下唇を噛み締める瀬尾は今までと違う印象を俺に与える。
「瀬尾」
島田が名前を呼び促す。
「ポチくんのところ」
傍観者としてさっきまで見ていた俺だがポチの登場により傍観者ではいられなくなる。
「おい、どう言う事だ!」
瀬尾は俺に対してそっぽを向く。
島田はその一言で理解し納得したようで、電話を取り出して居場所を伝えている。
瀬尾の中のヒエラルキーでは俺は下位なのだと分かる態度に苛立つ。
そして、ポチが巻き込まれてるのに蚊帳の外に
されているこの状況にも腹が立ち、乱暴に瀬尾の髪を掴み顔をこちらに向けさせる。
「俺にも分かるように現状を言え」
「ヤダ」
さっきまで怯えや震えは演技かと言いたくなるくらいの軽さで、言ってのけた瀬尾は舌まで出して挑発してくる。
「お前、立場分かってるのか?鎖に繋がれて乱暴に掴まれて、その態度か」
「だって、奏夜は僕を殺さない」
そう言い切り瀬尾は今度は逸らす事なく真っ直ぐこちらを見つめてくる。
「さて、瀬尾。お仕置きの時間です。それと、奏夜さんはこれでも次期組長候補です。そろそろ口の聞き方を覚えましょうか?」
電話を終えた島田が俺と瀬尾の間に入ってくる。「これでも」は、余計だが島田の言う事に逆らうつもりはないのか、瀬尾は下唇を一瞬噛んでぶっきらぼうに言う。
「生意気な口を聞いて申し訳ありませんでした、奏夜さま」
さっきの向けてきた真っ直ぐな視線はどうしたと言うくらい明後日の方向を見て、言わされてます感しかない謝罪をしてくる。
そして、これでいいでしょう?とばかりに島田に視線を送っている。
「幸夜さんは無事に保護しました。佐柳も巻き込まれているだけなので今回は不問とします」
俺はイマイチ状況が掴めないまま島田に説明を求める。
「ポチが巻き込まれたなら俺も知る権利あるだろ。島田、説明しろ」
「承知致しました。その前に冴島、救護班を呼んできてください。お仕置きはきっちりしますが先に太腿のナイフの手当てをしてあげないとですから」
「あっ、分かりました。ユウさん呼んできます」
バタバタと冴島が部屋を出ていく。
「簡単にご説明しますと、退屈した幸夜さんが佐柳を友だちにしたくって部屋を抜け出したってところです」
「友だち?何故ポチなんだ、アイツらに面識ないだろう」
「そうです。そこが瀬尾の入れ知恵です。全く迷惑な話です」
「島田は瀬尾の入れ知恵だとどうして思った?あの時の確信はなんだ?」
「幸夜さんが行方不明なのに、瀬尾がそっかで片付ける筈がありません。身の安全などを聞いてこないのなら瀬尾自身に心当たりがある。そう読みました。しかし、恐らくは瀬尾も幸夜さんが抜け出して会いに行くとは思ってなかったのでしょう?」
小さく瀬尾が頷く。
「なるほどな、瀬尾がポチの情報を流した。そして、親父のペットが遊びに出かけたって話か。ポチに友だちなんて与えるつもりはない」
「それは幸夜さんが望むのなら奏夜さんは許可するしかないです。幸夜さんがそれで満足するならあの方は与えるように命じるでしょうから」
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