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said:奏夜
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瀬尾のせいで、せっかくポチに捨てさせた世界がまた広がる。苛立ちが隠せない。
瀬尾に余計なことをしたことを後悔させてやりたいが、俺が与える罰より、島田の言う仕置きの方がキツい事は容易に想像がつく。だが、そうなると、この苛立ちを何処にぶつけようか。
「見事に今回は、巻き込まれですからお詫びに奏夜さんには今夜、佐柳との時間を差し上げます。それで見逃していただきたい。そして、瀬尾へのお仕置きはこちらに任せていただけませんか?」
思いがけない提案に苛立ちがスッと無くなる。
チラッと瀬尾を見れば、小さく「助けて」と口が動かされる。
さっきまでの散々な態度で何を今更とは思うが、自分の容姿を最大限に理解して此方の好みに合わせた仕草を仕掛けてくる瀬尾に情けをかけてやりたくなる。
ポチが居なければ、落ちてた。
「瀬尾はそっちに任せる。それでポチとの時間くれるんだな?」
「はい、本日の夜から明日の朝まで」
「分かった。今日の仕事は?」
「終了で構いません。佐柳は本家の奏夜さんの部屋に送り届けます」
足音がして、ドアが開く。
冴島が救護班のユウを連れて来た。
その後ろには吉野がいる。
「ユウさん呼んできました」
「また、瀬尾関連と聞いたので吉野も連れて来ましたが良かったですか?」
ユウが島田に問う。
「構いません。どうせ呼ぶつもりでした」
「島田さん、すみませんでした!!!今度は何を瀬尾さん、やらかしたんでしょうか?」
「先ほどの幸夜さんの騒動の発端とでも言いましょうか?まぁ、今回は瀬尾もわざとでは無さそうですが」
吉野……監視役に任命されているようだが瀬尾に振り回されている印象だ。
「今回、僕、悪くないと思うんだけど」
不貞腐れたように瀬尾が呟く。
「反省しない悪い子にはたっぷりお仕置きが必要ですね。吉野、しばらく私が預かります」
「その、あの、すみません。俺の監督不足です。俺から、しっかり言いますから大目に見て……」
「そうやって貴方が甘やかすから、瀬尾はいつまでも……いえ、そうですね。分かりました。1週間部屋での謹慎でいいです」
軽い、島田に任せた事に後悔するくらいの軽さだ。
「瀬尾、吉野に感謝しなさい。さあ、奏夜さん、佐柳を連れて来ますので部屋で休んでいてください」
そう言うと島田は吉野に何かを耳打ちし、部屋を後にした。
俺は島田の後を追う。
「おい、島田、待て」
「何ですか、奏夜さん?」
「何故、瀬尾を許した?」
「許してませんが」
島田が訝しげにこちらに視線を向けてくる。
「1週間の謹慎なんてただの怪我の休養でしかないだろ」
「私は彼が1番辛いであろうお仕置きをちゃんと与えました」
1週間の謹慎が瀬尾にとって辛いとは考え難い。それならばと考える。
「さっきの吉野への耳打ちか」
「ご名答です」
なるほど、謹慎は表向きに過ぎないと。
「何を命じた?」
「謹慎期間中、瀬尾を無視するように伝えました」
「それの何処が仕置きになるんだ?」
「同じ空間にいる中での無視は結構、精神的に苦痛ですよ?」
「確かにシカトされれば良い気はしないだろうが、大したことじゃ無いだろ」
「普通、そうですが不安定過ぎる瀬尾には耐えれないくらいの苦痛です。必死に、子どもの様に気を引こうとしている相手から無視されるんですから」
「どう言う意味だ」
「瀬尾は吉野に叱られたくって思い付く限りの悪戯をしてるに過ぎません。彼の幸夜さんへの想いは確かですが、恋よりも責任からです。本来、彼が求めているのは普段は甘やかしてくれて、それでも悪い時には叱ってくれるそんな飼い主ですから」
「瀬尾は吉野が好きだから、無視されれば精神的に苦痛になる。それが仕置きって事か?」
「まぁ、そんなところです。好きなんて言葉が似合わないくらい依存してる。見張りを付けておかなければ、自殺未遂何度するかってくらい追い詰めれます」
「共依存……」
「そうなところです。聴きたいことがそれだけでしたら、部屋に戻ってください。少しでも長く佐柳と居たいのなら」
島田は悪魔だ。
人の弱いところに的確につけ込み痛ぶる。
敵にはしたくない。
ポチを人質に取られるハメになったあの事件で敵に回さずに済んでいるのは俺に血統と言う価値があるからに過ぎない。
ポチを見ているから分かる。
恋い焦がれている相手に無視されれば心が荒れる事も。結局のところ、瀬尾は壊れきっている。だから何をしても落ちない。
本質的な所でポチと瀬尾は同じなのだろう。ただ、ポチは俺が拾った。拾った俺も壊れてたから歯車が上手く噛み合った。結果、ポチは幸せを感じている。それに対して吉野は正常だ。正常な奴に瀬尾は重過ぎる。そして、恐らく瀬尾の一方通行だ。その結果、満たされない瀬尾は壊れ続けていく。幸せなんて知らないまま。
次に瀬尾と関わるときは少し優しくしてやるかという気になる。所詮はその時の気分と状況しだいだ。
さて、瀬尾のことを考えるのは適当なところで切り上げ、勝手に世界を広げたポチが、どう俺の機嫌を取るかを考える。楽しみだ。
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