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「店長!!」
「檸檬、何か忘れ物………、はぁっ?!」
「店長!俺を助けると思って、今すぐ風呂と毛布貸してくれませんか?!」
俺はバーに入るなり、店長に助けを乞いた。
バーの2階は店長の住居スペースのため、一通りのものは揃っているはずだ。
幸い店に客は来ておらず、店長は驚きながらもすぐに準備をしてくれた。
「檸檬、知り合いか?それとも、拾ってきたのか…?」
「そんな猫みたいな…。助けたんだよ。だってこの雨の中、こんな薄い格好で倒れてたんだ。」
「まぁ、檸檬はお人好しだからな…。それより、そいつ男?女?綺麗な顔してるけど。」
「わかんねぇ。どっちにしろすぐに温めてやんないと…。」
びしょびしょの服を脱がせて、身体を温めて、新しい服を着せてやらないと。
細いし、下手したら死にそうだ。
「おまえ、童貞のくせに女を風呂になんか入れられんのかよ?」
「店長こそ、こんな状況で若い女の体触ろうって魂胆じゃねぇだろうな?」
「馬鹿。んなわけねぇだろ。」
嫌味を言い合いながら、とりあえずびしょ濡れになった服を脱がすと、そこには胸はなかった。
「「男………、だよな……?」」
俺と店長は口を揃えてそう呟いた。
だって、男にしては細すぎるし、顔が小さすぎる。
胸がないことに安心して下も脱がすと、ちゃんと付いてるものは付いていた。
「よし、檸檬。さっさと風呂入れてこい。」
「今、男だからって俺に押し付けたな。」
「お前が拾ってきたんだから当たり前だ。」
俺は冷え切ってガタガタ震えてる青年を抱き上げて、浴室に向かった。
いきなりお湯につけたら温度差でヤバそうだから、足からゆっくりお湯をかけてやる。
時間をかけて少しずつお湯の温度に慣らせ、やっとのことで青年を湯船に浸けた。
まさかこの歳で、同性と温泉以外で一緒に入るなんて夢にも思わなかった。
溺れないように後ろから抱え込むように支えてやると、青年の瞼が少し動いた。
「おーい…、平気か…?」
「……ぅ………」
「お。目覚めたか?」
「っっ?!!?!?!」
青年の目がゆっくり開き、そして目の前の状況に目を見開いた。
狭い湯船で男二人、とは言っても目の前のもやし男は細すぎるから男と数えていいのかは不明だが、大人に近い人間が二人入って身動きしたらぶつかるのは当たり前で。
「〜〜〜っ!!」
「ぷっ(笑)おまえ、今ぶつけたろ?」
青年は驚いて暴れた拍子に、湯船に肘を強打したようで、唇を噛み締めて涙目になっていた。
「まぁ驚くことはいろいろあると思うけど、とりあえず体温めようぜ。俺も雨に打たれて寒いんだわ。」
「…………。」
青年は状況が飲み込めていないものの、俺の言葉に頷いて、少し距離を空けて湯船の中で正座した。
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