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「ただいまー。」
午前中の講義を終え、サンドイッチとソフトドリンクを買って家に帰る。
静かすぎて焦ったが、零がリビングから覗くように玄関を見ていたので安心した。
「………おかえり。」
「ただいま。腹減ったろ?BLTサンドか照り焼き、どっちがいい?」
「びーえるてぃって何…?」
「ベーコンとレタスとトマトが入ったやつ。」
「じゃあ、それにする…。」
零はBLTサンドとオレンジジュースを選んで、俺が食べるのを確認してから食べ始めた。
まだ遠慮してんな…。
当たり前か。
「午前中、何してたの?」
「………ぼぉっとしてた…。」
「それ、暇じゃね?」
プッ…と吹き出すと、零は不思議そうに首を傾げた。
なんかこいつ、変なの。
変だけど、おもしろい。
「零はなんかしたいことないの?」
「……したい、こと?」
「うん。学校行きたいとか、バイトしたいとか、友達が欲しいとか。」
「ん………、あんまり…。」
「今まで楽しいって思ったのは、何がある?」
「んー………」
無欲というか、自分に無頓着というか。
そもそも何故こんなにも無口なのか。
感情もあまり表に出さない。
今までに会ったことないタイプだ。
けど、不思議と居心地は悪くない。
「檸檬は…?」
「え、俺?俺は最近だと大学とバイトが楽しいかな。」
「…そう、なんだ……。」
「零も大学通うのは難しいかもだけど、バイトならできんじゃね?ほら、俺のバイト先、昨日のとこだし。」
「泰さん…?」
「そうそう。バーだから未成年がなんだとか言いそうだけど。俺がお願いしてみるし、裏方くらいならさせてくれんじゃね?」
零に何か楽しいことを教えてやりたい。
裏方が楽しいかどうかは置いといて、店長以外にスタッフもいるし、人と関わる機会くらい持った方がいいだろ。
零は少し考え込んで、俺に尋ねた。
「バイトしたら、檸檬は嬉しい…?」
「まぁ、バイト先一緒なら安心はするけど。」
「じゃあ、する。」
今のどこで決心がついたのか、零はふんすとやる気に満ちた目で俺を見つめた。
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