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夕方、仕込みのために開店時間よりも早くバイトは始まる。
零を連れて家を出ると、もう辺りは陽が落ちて真っ暗だった。
「寒いな。」
「……うん。でも、檸檬がコート貸してくれたから、へーき。」
「そうか?」
零に服を貸してやってるが、何せ20cmほど身長も違えば体格も違うから、服はブカブカだ。
まさかこんなところで、彼シャツのような類を経験するとは思いもしなかった。
しかも、男相手に。
「服デカいよな、ごめんな。」
「……んーん、これがいい。」
「そうなの?」
「ん。」
零は気に入っているようだから、まぁいいか。
バイト先について扉を開けると、カランコロン…と音がする。
「お疲れ様でーす。」
「おう、檸檬。と、昨日のガキ。」
「零だよ、店長。物忘れ進んだんじゃね?」
「うっせぇな。分かってるよ。」
「痛っ」
店長に小突かれ、頭をさする。
零は俺と店長のやりとりを見て、ぱちくりと目を見開いた。
「喧嘩……?」
「違う!大丈夫だから!」
「痛い……?」
「大丈夫だって。店長も本気じゃねぇから。」
心配そうに俺を見つめる零に、毒気が抜かれる。
俺が零と話してる姿を見て、店長は感心したように声を上げた。
「昨日の今日とは思えないくらい、話すようになったんだな。」
「あー、うん。それより店長、零雇ってくれない?」
「何がそれよりだ。そいつ未成年だろ。駄目だ、帰った帰った。」
「裏方でいいから!お願い!俺と勤務時間は一緒で!」
「お願いの割に条件つけてくるんじゃねぇよ…、ったく。こっち来い。」
店長は頭を掻きながら、俺と零を奥へ手招きした。
なんだかんだ、店長は優しい。
俺が「よっしゃ!」と声を出すと、零も「よっしゃ!」と真似して喜んだ。
見た目と言葉が合ってなくて吹き出すと、零は首を傾げた。
「おい、おまえらさっそくクビにすんぞ。」
「ごめんなさい!ほら行くぞ、零。」
「…うんっ」
零は俺に続いて、店長の待つ店の奥へ向かった。
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