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「おかえり。」
「ただいま。」
家に帰ると、リビングで零がパズルをしていた。
この前俺がいない間の暇つぶしにと、1000ピースのジグソーパズルを零にプレゼントした。
「結構できたじゃん。」
「でも、まだ半分だよ。」
完成したら額縁に入れて飾るらしい。
それ用の額縁も、ジグソーパズルと一緒に買っておいた。
「そういえばさ…」
「ん?何〜?」
「零は恋したことある?」
「ゴホッ……、えっ…?」
俺からのいきなりの質問に驚いたのか、零は咽せて聞き返してきた。
いや、逸させないけど。
「したことある?」
「ある………けど………。」
「あるんだ?」
「そ、それより檸檬は?」
「ん?」
「檸檬は……、恋したことあるの…?」
聞いておいて何だけど、零は恋愛なんてしたことないと思ってた。
俺と同類だと思ってたのに、裏切られた気分だ。
いや、俺の勝手な決めつけだから、決して零が裏切ったわけではないが。
「俺はないんだよなぁ。」
「えっ…、今まで一度も?」
「うん。今日さぁ、俺は恋したことないからアイスバースの良さが分からないんだって言われて……」
「へぇ〜…。」
零はホッとしたような、安心したような顔で俺に相槌を返す。
「あながち嘘じゃねぇのかもな。アイスバースで号泣してた零くんは恋愛経験済みみたいだし?」
「べ、別に僕だって…、その……、最近初めてしたっていうか……」
「えっ?!」
零のまさかのカミングアウトに、俺は身を乗り出した。
最近初めてしたってことは、俺の知ってるやつか?
零と会った女って誰だっけ?
バイト先や大学の友人を高速で頭の中に思い浮かべる。
「先輩か?!」
「違うよ…。てか、詮索しないで!檸檬の馬鹿っ!」
「馬鹿ってなんだよ…。気になんじゃん。」
「教えたくないもん。」
「じゃあ、恋愛ってどんな感情?それだけ教えて。」
「どんな感情、かぁ…。」
零は「うーん…」と顎に手を当てながら考えた。
答えを待っていると、零は嬉しそうな顔で話し出した。
「えっとね、その人のことを思うとドキドキする。そばに居たいって思うし、触れられると嬉しい。一緒にいると安心するし、離れたくないなぁって思う……かな。」
「ふぅん。」
何だよ。
俺は名も知らぬ誰かに嫉妬した。
零にそんなふうに思われるのが、俺じゃないことにイライラした。
「風呂入ってくる。」
「え、急に?」
「悪いか?」
「いや、もう話いいの?」
「うん。いいや。」
俺は零に八つ当たりしてしまうことを恐れて、風呂に逃げた。
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