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零の冷たい手を握って、俺は告った。
「零、好きだ。」
言えた。
伝えた。
初めてで無茶苦茶で、何の飾り気もない俺の告白。
零はどう思うだろうか?
怖くて目が開けられなくて、やっと目を開けた時、零はぽろぽろと泣いていた。
それはとても幸せそうに。
頬を真っ赤に染めて、口を震わせて。
「零……、零、好きだ。」
「本当に…?夢じゃない……?」
この反応は、肯定と受け取っていいんだよな?
零も俺に想いを寄せてくれていたってこと?
「零。」
「檸檬…っ」
目を閉じる零の唇に口付けた。
幸せだ。嬉しい。
好きな人と結ばれるのは、こんなにも心が満たされることなんだ。
力いっぱいに抱き締めると、零も俺を抱きしめ返した。
けれど、俺の身体は不思議と濡れた。
おかしい。
今までみたいに零を抱きしめる感覚と違った。
目を開けると、目の前の零は溶け始めていた。
さっきまで俺と触れ合っていたはずの唇も。
まるで氷のようにぽたぽたと。
零の足元に、水溜まりが出来ていく。
「なに……これ……」
まさか。
嘘だ。
だってあれはフィクションじゃないか。
ただ昔、悪戯に誰かが言い出した俗説だろ?
「檸檬…、檸檬…っ」
「零っ…?」
「…怖い……、身体が……溶けてく……」
俺の背中に回っていたはずの零の腕は溶けて消えた。
俺が抱きしめている零の身体も、みるみるうちに溶けて消えていく。
「零…っ、なんで……、零っ、零…っ!!」
「…檸…檬………」
「零、好きだ。……なぁ、どうして?零…っ」
「……檸檬……………」
「嘘だって言えよ…!零っ!」
「…………れ…も………ん……………」
「俺が迷惑って言うまで離れねぇって、約束したじゃねぇか…!」
ぽたぽた…
ぽたぽた………
溶けて、溶けて、消えていく。
俺の初めて愛した人が、目の前で。
「……ご…めん……ね………」
「零っ…!!」
「……檸…………檬……、ぼ…くも……」
零は幸せそうな顔で微笑みながら、俺の前から消えた。
残ったのは、びしょ濡れになった、零が気に入ってよく着ていた俺の服と、ほのかなレモンの匂い。
「意味……わかんねぇよ………。」
俺はその場で崩れ落ちる。
つい3分前まで目の前にいたはずの零は水になり、雪と同化した。
零は存在さえ不確かな"アイス"だった。
そして俺は、アイスを殺してしまう"ジュース"だったのだと、今更になって気づいたのだった。
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