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脅迫状パニック!④-2
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ーーあ、ヤバい……鍵開けるなって言われた途端トイレに行きたくなってきた…。
我慢するか……いや、出来ない!
漏らしたら大事だ!
おれは誰にも会わないようにコソコソとトイレまでの道を急ぐ。
なんでトイレに行くのにこんなコソコソせにゃならんのだ!
くっそー脅迫状の送り主め…!
「ふう」
無事トイレを済ませると、おれは自分の楽屋まで急ぐ。
「ーーLINくん?」
「はい?!」
おれは、突如かけられた声にビクッと飛び跳ねると振り返る。
「あ……良かった、久我さん……」
おれの不審な態度に、久我さんが首を傾げる。
「どうしたの?そんなに驚くような声出しちゃったかな?」
「あ、いや、すみません…そうじゃなくて…」
おれが包帯の巻かれた手で頭をかくと、久我さんは何かを察したのか、頷いた。
「いや、言いにくいことなら良いよ」
「ち、違うんです!えっと……もし良ければ、おれの楽屋で話しませんか?」
久我さんはおれの言葉に驚いたように目を開くと、わかったと頷いた。
おれは楽屋に戻ると、しっかり鍵を閉めて久我さんを振り返る。
「えと、さっきは失礼な態度取ってすみません」
「いや、いいんだけど…何かあったのかい?」
そう問われ、おれは少し迷いながらもさっきあった事を久我さんに話す。
いきなりこんな事話すのはどうかと思ったけど、これで、もし万が一この嫌がらせが共演者まで及んだら嫌だなと思ったからだ。
「そうか、それで怪我を……。嫌な思いをしたね」
「いえ、嫌な思いっていうか……。アンチがいるのはわかってた事ですし、それ自体は仕方ないと思うんですけど……やっぱり直接目にすると怖いってのもあるし、そういうの、おれが目にしないようにスタッフさん達が気を遣ってくれてたんだなって思ったら、なんか情けなくなって……」
久我さんは何も言わずにおれの話を聞くと、うんと一つ頷いた。
「LINくんは、素直な子だなぁ」
そういうと、久我さんはおれの頭を優しく撫ぜる。
な、なんか照れる……。
おれは照れながらもそのまま撫ぜられたままにしていると、徐々にその手がおれの顔へ降りてきて、頬を親指でするりと撫でた。
「く、久我さん……」
「LINくん、マネージャーくんが帰ってくるまで暇だろう?良ければ今からここで次回の撮影の本読みしないかい?」
不意に久我さんの手がおれの顔から離れると、そう言って爽やかに笑う。
「え、良いんですか?」
「勿論だよ。決まりだな」
そうやって、三十分ほど本読みをした頃、第二回のラストシーンまで来た。
なんと、この回のラストは瑞樹と拓海のファーストキスのシーンがあるのだ。
『瑞樹……』
『橘堂さん……おれ……』
『しっ……』
そう言うと、久我さんはおれの顎を掴んで顔を上に向かせる。
そのまま、久我さんの顔が近づいてきて……あと少しで唇が触れそうになった瞬間、ガチャリと楽屋のドアが開く。
「凛さん!お待たせしました……!!久我さん?!」
敦士の言葉に、久我さんはゆっくりとおれから離れる。
び、びっくりしたー!
さすが俳優の演技力、本当にキスされるかと思った……!
「ーー残念。マネージャーくんが戻って来たね。じゃあ、おれはこの辺りで失礼しようかな」
久我さんはそう言うと、去り際におれの頭を軽く撫でて歩いてゆく。
残念って、最後まで本読みできなかったことかな?
おれは久我さんに頭を下げるとお礼を言う。
「あ、久我さん!ありがとうございました!」
おれの声に、久我さんは少しだけ振り返ると、にっと笑って言った。
「ーー拓海って呼んでくれ。仲の良い俳優は皆そう呼ぶ」
「は、はい拓海さん!」
おれがそう言うと拓海さんは満足そうに後ろ手を振ると、楽屋を出ていく。
「……どう言う事ですか、凛さん」
少し怒ったような敦士に、おれは必死で理由を説明する。
「いや、どうしても途中トイレ行きたくなってさ……!トイレに行ったら拓海さんにあって……怪我のこと聞かれて…」
おれはなんでこんなしどろもどろになってるんだ。
「……はあ、本当にあなたは警戒心がなさすぎます!……キスされそうになってるし……」
「ん?」
最後がよく聞き取れなかったけど、おれはとりあえず敦士に謝る。
「ご、ごめん?」
「とりあえず、帰りましょう……しばらく、家でも注意してくださいね?」
「あ、じゃあ今日は悪いけど優の家まで送ってくれる?」
「?優さんの家ですか?」
「そう。一緒にゲームする約束してんの」
おれと優はゲーム仲間だ。
おれは雅紀の時からゲームは好きだったし、今も好きだ。
優もなかなかのゲーム好きで、暇があればオンオフ共にゲームしてたりする。
今日は今やってるオンラインゲームのイベント開始日なんだよな。
撮影が何時になるかわかんないって言ったんだけど、それでも良いからイベントに来いって言われたんだよな。
オンラインゲームだから、別にお互いの家でも良いけど、こんな状況だし俺も一人じゃない方が心強い。
優ならきっと押しかけても嫌がらないだろう…多分。
おれは敦士の隣を歩きながら優へ電話をかける。
『もしもし凛?撮影終わったの?』
僅か1コールで出る優、どんだけ待ってたの。
そんなイベント行きたかったなら先にオンしてれば良いのに。
「おー終わった。で、急で悪いんだけど、今からお前ん家行っていい?」
『………!』
電話口でガタッと何かがぶつかる音がする。
「あ、まずかった?まずかったならいい……」
『今どこだ?すぐ迎えに行く』
「迷惑じゃない?」
『明日はお互い午後入りだろ?大丈夫だ』
「サンキュー。今局だから、今から敦士に送ってもらうよ」
『わかった、待ってる』
やっぱり優はいいやつだなー。
おれは少しだけ気分が浮上しながら、優の家に向かった。
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