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脅迫状パニック!⑥-2
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アルバム曲の収録も残り二曲のみとなり、今日は早めの解散となった。
おれは敦士の運転する車で清十郎の家へと向かっていた。
優はなんだかご機嫌斜めだ。
「優、ごめんって」
「今日も泊まりに来るって言ったのに」
「決まったことにグダグダ言うのは男らしくないぞ」
清十郎の言葉に、優はウッと口を閉じる。
「ゲームならまたやりに行くから。な?」
「……キスしてくれたら許す」
「は?!」
また訳の分からないごね方をしだした優に、清十郎がよし、と頷く。
「おれがしてやろうか?」
「なんでおまえとキスしなきゃならないんだ!やめろ気持ち悪い!」
「いやまてまて、昨日散々おれにキスしといてそれは無いんじゃない?」
「凛は別」
いや、それ意味わからないし。
そんなやりとりを続けているうちに、清十郎のマンションに着いた。
「じゃあな、優。また遊びに行くから」
「絶対だからね」
そんなこんなで優と別れて、清十郎のマンションに入る。
「すまんな。何にもない部屋で」
清十郎の部屋は性格通り、サッパリとした男らしい部屋だった。
別室には簡易ジムの様なものまである。
「おれこそ急に世話になって悪いな」
「こんな時くらい気にするな。シャワー浴びるか?使い方教えるぞ」
「いやいや、家主から先にどうぞ」
「客からだろう?」
散々揉めて、結局おれが先に入ることになった。
清十郎は頑固ーー意志が強いからなあ。
おれはシャワーを浴び、ほかほかになった状態で清十郎に声をかける。
「清十郎、シャワーお先」
「ああ。じゃあおれも入ってくる。ソファでもベッドでも適当に寛いでてくれ」
流石にベッドはダメだろ……と思ったので、ソファに腰掛ける。
皮張りのソファはフカフカで座り心地がいい。
優の家のソファもいいソファだったけど、清十郎の家のソファもいいなぁ。
そんな事を考えていると、なんとなく張っていた緊張がほぐれて、ウトウトとしてきてしまった。
そのままソファにもたれかかり目を閉じる。
「……凛!」
「……はっ」
しまった、ついウトウトして寝ちまった。
「わ、悪い…寝てたなおれ」
「寝るのはいい。けど、こんな所で寝たら風邪をひく」
その通りです、済みません。
おれは起き上がり、何か毛布でも貰おうと立ち上がると、当たり前のように清十郎はベッドに手招きする。
「……え、狭くね?」
「しかし、うちにはベッドは一つしかないからな」
「いや、おれ、世話になってる身だし、ソファでいいよ」
「かけるものがない。凛がそこに寝ると言い張るなら、おれがそこに行くぞ?」
う、清十郎ならやりかねない。
「わ、わかったよ……」
まあね、男の一人暮らしで余りの布団があるとかあんまり無いかもしれないよね。
おれはもそもそと清十郎の隣に入ると、清十郎は当たり前のようにおれを抱き込んだ。
え、おれ抱き枕扱い?
その逞しい腕にガッチリホールドされて、おれは身動きができない。
いや、あったかいけども。
「せ、清十郎?」
「寒くないか?」
「寒くは……ないです」
「そうか、ならいい。電気消すぞ」
いいんだ?!
いいの?この状況正しいの?
おれは混乱する頭を押えることもできず、ただなすがままに抱き枕と化していた。
「……昨日」
「うん?」
突然、清十郎が暗闇の中おれに話しかける。
「優とキスしたって……」
「あー……」
おれは昨日を思い出して顔を赤くする。
「……どうだったんだ?」
「どうって……なんで答えればいいんだよ。あれは優に揶揄われただけだよ」
「………」
「………」
「上手かったか?」
「そ、れは……上手かった」
なんつー会話だよ。
おれは穴にあったら入りたいくらいの羞恥心で答えた。
おれを抱きしめる清十郎の腕に力がこもる。
「………」
「…なんだよ」
「……おれの方が、上手い」
は?!
何言い出してるのこいつ?!
なんでそんな所でそんな対抗心燃やしちゃってるの?!
「試して、みないか?」
はあ?!
さらに何とんでもないこと言い出しちゃってるの?!
「いや、清十郎何言って……」
おれの言葉を遮る様に、清十郎の唇がおれの唇に押しつけられる。
「……?!」
おれは驚きの余り目を見開く。
目の前には清十郎の端正な顔。
清十郎はちゅ、と軽くリップ音をさせて一度離すとさらに強く唇を押し付けられる。
ゆっくりと唇を揺さぶられこじ開けられると、ぬるりとした舌が口内へ侵入してきた。
歯列に舌を這わせ、逃げるおれの舌を絡め取るときつく吸い上げる。
「……っふ」
暗闇におれたち二人の荒い息が響く。
おれの後頭部をしっかりとホールドした状態で激しく口内を弄られ、おれは頭の芯が痺れた様な感覚に陥った。
くっそ、どいつもこいつもキスうますぎるんだよ!
いつのまにかベッドに縫い付けられる様な体勢になっていたおれのシャツの下に、清十郎は手を滑り込ませている。
ちょ、ま、なに服脱がせようとしてんの?!
おれは蕩かされた頭を必死でフル回転すると、清十郎の肩を力一杯押し返した。
「スト、ストップ…!!わかった、おまえも上手い…充分上手いから……!!」
「……気持ち、良かったか?」
「……何てこと聞いてんだよ!」
おれは顔面から火が出そうなほど赤く染めると、清十郎の顔を手で押し退ける。
「凛……」
その無駄にいい声で耳元で囁くな!
そして耳を齧るな!
「わかったよ!言うよ、気持ちよかったです!!」
おれは清十郎の腕を振り解き、背を向けて眠る。
もう、とてもじゃないけど今は清十郎の顔なんて見えない。
「凛、怒ったか?」
おれの腰に手を回しながら、清十郎はそう聞いた。
「怒っては、ない。でも……それ以上やったらおれ、ソファで寝る」
「わかった。もうしない。だから……こっちを向いてくれないか?」
おれは少しだけ逡巡すると、もそもそと清十郎の方へ向く。
相変わらず、羞恥のあまり顔は見れない。
清十郎はホッとした様に優しくおれを抱き寄せると「すまない」と囁く。
おれはため息をつくと、清十郎の背をポンポンと叩いた。
「怒ってないから。ほら、もう寝るぞ」
まったく、おれはメンバーに甘いな……。
わかっていた事ではあるけど。
そう思いながら、おれは眠りに落ちていった…。
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