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濡れた悪魔
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学校の帰り道。最近は近道として廃墟の下を通る。
薄暗い廃墟はいつもながらに異様な不気味さを放つ
ポツポツと細い雨が降り始め、濁った空を見上げると屋上から身を乗り出す人影。
今にも飛び降りてしまいそうな雰囲気が漂っている
……見なかった事にしよ、
そう思いながらも何故か体は勝手に廃墟の中へと動いていた
埃の舞う薄暗い階段を駆け上がり、重たく錆びれた屋上の扉を引く。
黒髪の小柄な男は柵を乗り越え、曇って何も見えるわけのない空を見上げている
投げ捨てられるように散乱したカバンと靴。
その男の心境を物語っていた
何故来てしまったのか、男の姿を見て今更になって自問自答していた
いつもなら人が死のうが、殺されようが
気にすることすらなかったはずなのに
…こういう時どうすればいいかなんて分かるはずも無い。
自殺を辞めるように説得させるべきなんだろうが、人を納得させるような言葉を思いつく程の脳ミソ持ってるわけもない
しかし今はそんな事をほざいてられる状況でもなく
掛ける第一声を男の背中を見つけながら必死に考えていたが
そんな俺を待ってくれる訳もなく、ゆっくりと身体を前へと傾むけた
「おい!!!!ンの馬鹿野郎!!!」
咄嗟のあまり結局はいつも通りの下品な言動にうるさい声
ああ、やっちまった……
俺の顔からは血が引き、全身から滲み出た冷や汗は雨と交わり一緒に体温を奪っていく。
しかし意外にも男はピタリと動きを止め少し不機嫌そうに振り向いた
「……誰。」
振り返った男の髪から滴る雨
長い髪の狭間で冷やかで真っ黒な瞳を覗かせていた
シャツは砂場で泳いできたかと思う程に泥で汚れ、透けた肌から見える茶色くなった無数の傷。
思わずその男の醜さに俺は顔をしかめると男は身体を震わせ俺を馬鹿にしたように笑っていた。
「ハハハ…死ぬ所を笑いにでも来たの?」
「ッ……何言ってッ。」
「………いいよ、そこで見ててよ。」
そう言うと男はまた俺に背を向けて、もう一度踏み出そうとしていた。
「ちょ、!!なにしてっ……」
気がつくと足が勝手に動いて、俺は柵越しに男を抱き寄せていた
雨で冷えた男の体は俺より一回り小さくて
心臓はドクドクと音を立てて必死に生きている
「……ンな馬鹿な事すンなよ。
お前がなんでこんな状況まで追い込まれたんだか知らねぇけどさ、何かに悩んでるなら相談とか乗ったり、助けてやる事だって出来るかもしれねェ……。」
って、初対面で何言ってんだって話だよな
馬鹿馬鹿しい、そう思いながらもこいつを助けてやりたい、と心から思った
「俺が出来る事なら何でもしてやるから」
「……ッぅ…ンッ。」
掠れて声にならない返事に安心を覚え、震える身体を強く抱きしめた。
空を見上げると雨は止んでいて、男も少しは気分が良くなっているようだった
「家まで送って行くか?」
「……っいや、僕は…。」
喉に詰まる言葉と暗い表情は帰りたくない、そう言っていた
…この状況も家に何かしらの理由があるんだろう
まあ、本人から聞いた訳でもない、ただの憶測だけど
なら選択肢なんか1つしかねーだろ
「お前、俺ン家来い」
「……ッ!?いやいやいや!…迷惑だし、……大丈夫っ。」
あからさまに嬉しいのが表情に出ている。
一丁前に遠慮なんかしているが本当は来たいんだろう
気遣っての事なんだろうが、このままここに置いておく訳にもいかない
「はぁ……ッたく行くぞ」
無駄な遠慮をする男の腕を強引に掴み、2人合わない足取りで家へと向かった。
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