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夏休み(7)
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side ちとせ
「失礼します、お待たせ致しました」
無言で見詰め(睨み)合っていた俺たちに頭上から声が降る。店員さんはにこにこと笑顔で番号札と商品の乗ったトレーを入れ替えると
「ごゆっくりどうぞ」
と言って去っていった
未だに睨みつける俺から視線を外した斗真はテキパキとジュースにストローを刺したり、ハンバーガーの紙を剥いて持ちやすくして渡してきたりする。食欲には勝てず大人しく受け取るとククッと喉の奥で笑われた
むしゃくしゃする心を押さえつけてハンバーガーにかぶりつく。この一口目が最高だなと僅かに怒りが収まる
もぐもぐと頬張っていると急に目の前に何かが突き出される。見れば小さいパンケーキで、鼻先に持ってこられると甘くていい匂いがする
口の中のものをごくんと飲み込んでからあーと口を開ければパンケーキが入ってくる。ハンバーガーの塩っぱさの後のパンケーキの甘さは堪らない。当然のようにまた口を開ければもう1つ運ばれてくる
「美味いか?」
「うん」
「そりゃよかった」
俺の機嫌が良くなったとわかると斗真は自分のハンバーガーを食べ始めた。まんまとしてやられたわけだがいつものことだ。何だかんだと斗真は俺の扱いに慣れていて、なんで怒っているのかも、どうすればそれが収まるのかも全部わかるのだろう
ちらりと斗真を見れば直ぐに気がついて「どうした?」と目で問うてくる。視線を逸らせばなんでもないのかとまたハンバーガーを食べる
多少ムカつくがこんな面倒くさい俺の性格を可愛いの一言で済ませてしまうのだからおかしな奴だ。いつか瀬戸も言っていたし、俺も身をもって実感しているが本当に斗真は世話焼きだし構いたがりだ。それを他の人に発揮しているところは余り見たことがないが、斗真からみて身内かそうじゃないかの違いなのだろう
ぼーっとしていると斗真の視線に気がついてはっとする。もう食べ終わったようでコーヒーを飲みながら俺を眺める斗真は真顔に近いがよくよく見れば笑っている
ほんと、変なやつだな…
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