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『ゆづる』という存在(3)
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side ちとせ
固まっていた斗真が我に返ったのかスマホを手に取って何やら操作をして耳に当てる
「ゆづる、悪いが切るぞ」
ほんと、気に入らねぇ…わざわざスピーカーをオフにしたことも、『ゆづる』に気を使って切ると断りを入れることも、今目の前に俺がいるのに視線を逸らして通話に意識を向けていることも、何もかもが気に入らない
「あぁそうだ、だから…」
いつまで話してる、早く切れよ。
手を伸ばして斗真からスマホを奪い取る。突然の俺の行動に目を見張ってスマホを取り返すこともしない斗真の目の前で通話終了ボタンを押す
とぅるるん、という独特の通話終了音。表示された相手の名前とアイコンに更に苛立ちが募る。『ゆづる』もうその名前だけで苛つく。何よりアイコンが斗真とのツーショットだった。斗真の腕に抱きついて満面の笑みのゆづると、それを見下ろして苦笑している斗真。今より少し幼く見えるため、恐らく中学の時のものだろう。また俺の知らない斗真とゆづるの時間が垣間見えて不快な思いで胸が埋め尽くされる
「何やってんだ…」
そう言ってスマホを俺から取り返すと斗真はまた操作し始めて、指の動きから文字を打っていることがわかる。ゆづるにメッセージを送っているのだろう
ムカつくムカつくムカつく…
負の感情が溢れて胸の辺りがぐるぐるして気持ち悪い。抑えることの出来ないそれに、どうしようもないその感情に押し潰されそうだ
やっとスマホを閉じて置いた斗真が俺を見る。視線が合うがなぜか責められている気がしてくる。悪いのは斗真なのに、俺よりゆづるを優先した斗真が絶対に悪いのに…
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