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包まれる
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side ちとせ
風呂から出て身体を拭かれ、服を着せられ、髪を乾かされている間ずっとうつらうつらと船を漕いでいた。時々はっと目を覚ましては斗真に笑われた
また抱き上げられて運ばれたがもうしがみつく元気は残っていなくてだらんとして身を任せた。着いた部屋はいつもの部屋じゃなくて黒や紺を基調とした落ち着いた雰囲気だった
「ここ…」
「ん?あぁ、俺の部屋だ。そういえばお前は来たことなかったっけ」
斗真の部屋だった。以前入ったことのある斗真の部屋とは別でこっちは寝室ということだろう
そんなことより「お前は」という言葉が気になった。俺は来たことがなくて、『誰は』来たことがあるのか…さっきまでのいい気分が一気に台無しになった
「……」
「ちとせ?」
どうした?と顔を覗き込んで来た斗真を無視して不機嫌オーラを全面に出す。すると斗真は俺をベッドに降ろして部屋から出ていった
さすがにここは斗真の寝室だし、置いていかれたわけではないだろうがそれでも態度が悪かった自覚はあるためちょっとだけ不安になる。しかし斗真は直ぐに戻ってきた。手に灰色の塊を持って…
ほら、と渡されたそれはいつかの犬のぬいぐるみでふかふかで柔軟剤のいい匂いがした
「洗ってすぐ返すって言ってたのに悪かったな」
まさかそれで機嫌が悪かったと思っているのか…?思わず訝しむように斗真を見てしまい
「どうした?」
と聞かれた
「…別に」
手元の犬を見下ろして微妙な気持ちになる
「電気消すぞ」
そう言ってリモコンを手に取りピッと明かりを落とした
暗くなった部屋でも斗真は場所がわかるのかコトンとリモコンをどこかに置いてベッドまで来た。ベッドに腰掛けていた俺の背中側に寝転がったかと思うと引っ張られてその腕の中に閉じ込められた
「はな、せ…」
「なんで?」
なんで???
「はぁ…」
言っても無駄かとため息を吐くがそこでふと気がつく。さっき風呂に入る前に1人でいた時は重苦しくて仕方のなかった気分でため息を吐いていたのに、今のはどこか仕方ないなと呆れたようなため息だった
虚無感も物寂しさも鬱々とした気分ももう感じない。ぽかぽかと暖かい体と心。クーラーの効いた涼しい部屋で、斗真の体温と匂いに包まれている
悪くない…なんて、むずむずと緩みそうになる口元を誤魔化すように眉間に皺を寄せて、唇をツンと尖らせて、腕の中の犬をぎゅうぅと抱きしめた
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