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異例の花魁 初夜 ※微R
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べろべろとざらついた舌が、俺の脹ら脛を数回往復する。
膝に載せる予定だった琴は襖の近く、手を伸ばしても届かないような所に転がっている。
「ん……っ、ぅぐ…あっ、ちょ」
は、は、話が違う〜〜〜〜っ
俺は歌を歌う芸者として働かないかと誘われて、それなら…とここで働きたいと言ったわけで、こんなまんま売女みたいなことするなんて聞いてないぞ!
いや、説明は受けたけどこんな体勢、ほとんど性行為じゃないか。
と、どれだけ喚いてももう既に客はこうして俺を指名して金も払ってしまったし、まさに時すでに遅し。
そもそも助けを呼ぼうにも彼をなんて呼べばいいのか分からないし。
そう、あれだけのことをしておいてお互いの名前をまだ知らないのだ。
趣味や行きつけの店を話しただけでなく体の隅まで見せ合ったのに、普通なら一番最初に聞くべき名前を今の今まで知らないままだったというのだからおかしな関係だ。
それを今、このタイミングで気づかされたというのもまるでこの男のおかげであると言われているような気がして嫌に腹が立つし悔やまれる。
「初めてらしいけど、どこか上の空だね」
「!!!!」
「いいよ、変に緊張されるよりやりやすいから、ねっ」
「んぅっ、!?」
ヂュルルッと足首に音を立てながら吸い上げられ、強く噛み締めた唇の両端から声にならない鼻にかかったような嬌声が漏れる。
抑えなきゃ、こんな誰かも知らない奴に触られて感じてるなんて思われたくない。
噛みちぎる勢いで、なんとか声を出すまいと必死に食いしばる。
「声を我慢してるのもまた初々しくて可愛い。だけどいつかはもっと可愛いその声をたっぷり聞かせて欲しいな」
「っ、」
「あぁ〜〜……本当に可愛いね。そうだうちに来ないかい?俺は隣町で大きい串屋を構えてるんだ、不自由はさせないよ」
『いつか』……?
そんな日なんて一生来ないで欲しい。
冗談じゃない。絶対に嫌だ。
俺は彼と一緒にいるために、こんな気持ち悪いことも我慢して……っ
そんな仮にも男娼とは程遠い荒れた言葉の数々が口をついて出そうになった。
ダメだ、今問題起こしたら確実に彼と一緒に居られなくなる……
彼の言っていたとおり、確かに俺達人魚は生臭いからとまともに働けず、元々好きだった歌でなら匂いもそこまで関係ないしと町を出てきた。
当然好きなものだけで食べていくなんて夢みたいな話はそうそうなく、ここを出されたら結婚なんて出来ないだろう。
「ぅっ、く……んん」
抑えろ、抑えろ。
舐められるだけ、たったそれだけ。
そう、彼があの後申し訳無さそうに持ってきた契約書には、性的な奉仕をさせられたりなどの行為は入っていなかった。
代わりに終わるまでの後15分程、舐められるのをただただ我慢する。
『本当にごめんなさい』
『既に絢女さんに人魚だってバレてて…』
『「長寿の叶う人魚の鱗」は普通に芸者になるより高値で儲かるからって』
『何とか交渉しようとしたんですけどオレなんかの立場じゃとても…』
『40分、足の鱗を舐めさせるだけでいいんです』
馬鹿。
謝るくらいなら一緒に夜逃げするくらいはしてくれてもいいのに。
『絢女さん』と俺、どっちが大切なんだ、って。
なんて。
本音じゃないかと言われれば嘘になるけれど、あの彼が恩人と慕い自分の居場所と思っているこの場所を裏切れと強いるような事は本望じゃない。
あぁ…
こういう行為には無縁で、別世界の話だと思っていたんだけどな。
「っん、んん…ぁ」
気づけば俺はテーブルの上の契約書にサインをしていたのだ。
「くふふ、可愛いよ……きょうくん」
煩い、煩い。気持ち悪い。早く、はやくおわれ……
気を紛らわそうと目を瞑っても耳元でねっとりと囁かれる『きょうくん』に嫌でも現実を見させられる。
あぁ、こっちでその名を呼ばれるなら彼が一番目がよかった。
堪えきれず左目から零れた水滴を、目の前の猛った男は昂りから来ているものだと勘違いしさらに興奮したように鼻息を荒くした。
こうして、俺が異例の「鱗舐め」という男娼として働き始めて初めての夜はどろりと過ぎていった。
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