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こんな夜は
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勉強机の一番上の引き出しの一番奥。
もう覚えた手の動きでまたそれを取り出してしまう。
──捨ててしまおうか。こんなもの。
窓から投げてしまえばもう庭の雑草に紛れて分からなくなるだろう。
そうだ、そうしよう。
荒々しく握りしめた右手を振り上げ、衝動に任せて任せ半回転した。
カーテンが風に誘われて揺れる。
身を締め付けるような冷たい夜の空気が部屋に流れ込んだ。
そして目に飛び込む満月が窓枠は自分を飾る額縁だとでも言うように輝く。
──だめだ。やっぱり僕にはできない。
満月に体の力を吸いとられたように冷たい床に座り込む。
祈りにも似た吐息がじわじわと部屋を満たす。
数えきれないくらいこうやって捨てようとして、それと同じ回数だけ思いとどまってきた。
月が綺麗なこんな夜は、特にそう。
ため息を1つして手のひらの中の小さなボタンを引き出しに戻す。
奥の奥へ──なるべく忘れられるように。
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