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バッハの亡霊
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ひとりで通学する2学期
人は慣れる生き物だと
改めて解る
9月のレール
帰ろうとした俺 の前
ひとりの男
ニヤニヤと 笑って
長髪を揺らす
一言
付き合えよ
一言
断る
教科書をカバンにしまう 俺
の耳元で
「ミカエルの王様」
鼓膜がチェロで震えた
捨て去ったはずの過去
あの店での出来事
なぜ
今になって
男は右の人差し指は
二酸化炭素に
ついて来いと描く
いつか聞いた無伴奏組曲
を 男は引っ提(サ)げて歩いた
30分経過
マンションに入った
第2番 二短調 BWV1008が
敷かれた部屋にはベッドオンリー
薄暗い奥から響く重音
入れよと閉ざされる空間
肩を抱かれ唇を奪われる瞬間
「俺の名は仙崎神谷(センザキコウヤ)
王様のファンさ」
それだけつぶやいて
その制服を落として
今は亡き
裸の
王様を
喰らう
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