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行為※R15
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17回目の夏は、同じケーキに向き合ってロウソクの火を消した。
恋はにかって笑って「誕生日おめでとう」と言ってきた。「恋も、誕生日おめでとう」と言ったら、「これも毎年恒例だなー」と言ってきた。
来年も、再来年も、十年後も、しわしわのおじいちゃんになっても、一緒におめでとうを言い合える仲でありたい。そう思うことは可笑しいことじゃないはずなのに、最近の恋はなにか迷っている。
俺は恋の一番近くで、恋のことを見てきた。
どんな恋も知ってる。朝起きたらすぐに顔を洗いにいくことも、本当は寝癖がつきやすいことも、朝ごはんは絶対ご飯派なことも、朝ごはんを食べた後、お腹いっぱいのはずなのにお母さんの作ったパンを食べてくれることも、いつも背負ってるギターケースのチャックがすぐに壊れることも、夕焼けの赤が嫌いなことも、誰よりも友達を大事にしてることも、俺より手が大きいことも、恋がほんとは、俺という存在を重く、重く捉えていることも。
知っているからね。俺は、恋が思っているほど何も考えてないわけじゃない。
恋のことならなんだって知ってる。博士の称号を貰ってもいいぐらい、知ってる。逆に、…恋のことしか知らない。
俺の歩く道には、必ず恋がいた。
俺の二歩前を歩いては、なんども、なんども振り返って俺の名前を呼んでくれる。
「愛、転ぶなよー」って、今にも転びそうなのは恋のほうなのに。真っ赤なリュックと、振り返る恋の笑顔が、大好きだった。
お揃いで買ったコンバースのスニーカー、俺のは綺麗なままなのに、恋のは汚れて黒ずんで、お揃いで買ったスマートフォン、俺のは綺麗なままなのに、恋のは傷だらけ。
俺たちみたいだ。
いつも、恋に守ってもらってばっかりの俺は綺麗なまま。傷だらけになっていく恋を見つめるだけ。
一歩前を歩いて、俺が怪我をしないように道を示してくれている。俺はそれに甘えてるだけなんだから、恋の傍にいることが心地いいのは当たり前だ。
「恋、キスしたい」
「んー?んー。」
「へへ、唇かわいい。」
「うるせーよこんな綺麗なツラして生まれておいて、お前がそれをいうか!」
「ぶっ、ほっへたふかむもやめへ!」
「はは、何言ってんのかぜーんぜんわかんね」
唇が触れるのがすき。
恋が生きるために咀嚼を繰り返す口が、俺とくっついていることがすき。
暖かい体温がすき。
すき。
「ねぇ、恋。ムラムラっときてる」
「へー、んじゃ今日は俺が突っ込むな」
「えっ!?」
「やだ?」
「………えーー、やだじゃないけど、俺の方が背ぇ高いのに」
「2センチな!俺の方が筋肉ついてるけど?」
「鍛えるわ。むきむきになる」
「似合わねーからやめとけって、ほらほら脱げ脱げ」
繰り返した性行為に、もう恥じらいなんてもんは無くなった。そのかわり、心臓の高鳴りは変わらない、ほんとに、何度触れて、触れられても。
恋はかっこいい。
顔だけの俺と大違い。
ほんとにかっこいい。
こんなにかっこいい人が、俺のことを大切だと言ってくれることが、こんなに、幸せなことが、
(他に、ないよね)
俺より少しだけ大きい手のひらが、俺の頬から鎖骨、胸、と、少しずつ降りていく。
「ん…っ」
「色っぽい声しやがってこのやろー」
「ふふ、こうしたら、恋もな。」
極端に弱い、恋の耳。威嚇のつもりか、不思議なところに開けられたピアス。冷たい金属を指でなぞると、恋の顔が一気に赤くなっていく。
「ひ、っ、お前なあ!」
「恋を困らせるの、好きみたい」
「んなの俺が困るだけじゃん、もーお前いちいちエスっぽい、ちょっと黙れば。」
赤い唇に唇を塞がれる。
恋は、キスが上手い。苦いなぁ、またタバコ?吸ってたんだね、俺がここに来るまでに。絡め取られる舌、ぞわぞわして耳の裏にまで鳥肌が立ちそう。なぁ、困るのは俺だよ。こうやって、すぐ、俺のこと夢中にさせるから。俺のこと、掴んで離さないのは、恋だろ。
震える内腿、するりと撫でられるとすぐに勃起する、もうやだ、恋、俺ほんとは、恋にならなにされてもいい。どんなことだってあなたが一番正しい。どんなことだってあなたが俺の全て。
いつも乱暴な言葉ばっかりなくせに、こんなときだけ優しい手のひらも、すげぇ音楽を生み出すその指も、俺の名前を呼んでくれる唇も、あなたの全てが、すき。
「ぁ、あっ。ちょ、っと…!恋、恋…!へたくそ」
「減らず口、黙ってろっつーの…ッ!すげー良さそうにしといて、バカ」
「うるさいなぁ、んッ、ん、…そこ、ヤダって…!」
「やるなって言われたら余計にさぁ?やりてーじゃん、お前の嫌なこと」
「ひっ、でぇ……!」
こんなことだって出来んの、俺。
恋になら、女みたいに脚広げて、こんな声まで出せんの、俺。自分でも十分どうかしてると思ってるよ。それでも、ねぇ、お願い。
回す腕に力を込める。
お願い。
お願いします。
(俺を、捨てないで)
何を迷っているの。
その目がいつも、俺ばかりを見ているわけじゃないのは分かってる。俺よりずっとかっこいいお前は、俺の見えてないずっと先が見えているんでしょう。
何を、迷っているの。
ついていくよ、どこまでも。恋の傍に要られるなら、他はなにも要らない。
要らないから。
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