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青春
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秋がすぎて冬がきた。センター試験というものを受けた。鼻を赤くした恋が並愛の駅まで送り出してくれた。手作りらしき謎めいたお守りを持たされたけど、可愛いからカバンにつけることにした。そしたら、あんなに苦しくて辛かった勉強が、ほんとにやってきてよかった!と思えるほど、問題がすらすらと解けた。難関大学、ここに受かれば恋とまだ一緒にいられる。
恋がくれた謎のお守り、その効果のおかげだろうか。
俺は無事、大学合格をはたした。
それを真っ先に恋に伝えると、ずびずび鼻を鳴らしながら泣いてくれた。なんども「よかったなぁ、よかったなぁ…!」って、母さんたちよりもずっと、泣いてくれた。
ああ、やっぱり、俺が。
今度は俺が守ってやんないと、そう思った。俺がお前のヒーローに、なりたいと、思った。
恋と、あっちで暮らす部屋を探すのは楽しかった。恋は低家賃低家賃って言ってたけど、二人で折半するんだから、と言ったら「楽しみだな、同棲」と笑ってくれた。
愛おしいと思った。愛おしいと、思った。だから、また恋をしよう。なんども、なんども、恋をしよう。お前に。そしたらいつかそれは恋愛になって、愛に変わるんじゃないかって思うんだよ。
寒い季節。卒業まで、もう一ヶ月を切っていた。無事部屋も決めて、俺もそろそろ荷造りはじめないとな、と思い始めた頃、大学合格を噛み締めていた頃、やっぱり浮かれすぎ、かなぁ、毎日が楽しくてしかたない。恋と、のこりの学生生活を満喫するかのように、いつも通りの日常に戻った。毎日二人で一つのような生活をして、恋にべったりとくっついていた。幸せだ。
卒業間近になると、みんなは思い出を欲しがった。まったくもって知らない女の子に、一緒に写真をとってください!といわれたり、告白をされたり、サインを要望されたり。俺、サインとかないし。そんなの持っててどうすんの!って感じだけど。恋はそれを笑いながら「相変わらずモテんなぁ、王子さまー」という。その目に嫉妬の色は感じられなかった。潔のいいところは、恋らしいけれど、恋人なんだから少しぐらい妬いてくれてもいいでしょ、って口を尖らす。恋は笑った。
毎日、笑ってくれた。
むかしに戻れるように。
最後の授業の日。この一週間後には卒業式とお引越し。その前に、明日は恋たちの卒業ライブ。校舎をゆっくりと歩きながら、景色を焼き付ける。
ここで、青春をしていたのだと。
忘れないように。
今日も恋が隣にいるのだと。
忘れないように。
「恋、明日、卒業ライブだね。」
去年恋が、庄司くんを送り出したあのライブ。今度は恋たちが送り出される番だ。恋は名残惜しそうに、放送室を眺めながら「そーだなぁ」といいながら、少し不満そうな顔をしていた。
「いっぱい練習したんだろ、なんでそんな腑に落ちない顔してんの。」
「Gactじゃねーバンドで一年、俺は何が学べたかなーとか、考えてたんだけど。それより先に、寂しいなーつてことばっかでてきてさー、参るぜ」
そういって苦笑を漏らす恋が、ぐいっと伸びをした。
「お前は、西浦恋のファン?Gactのファン?」
「俺?Gactのファンで、西浦恋のお婿さん。」
「はは、まだお婿さんネタ引っ張ってんのかよ!しゃーねーなー、んじゃ引越し住んだら結婚式でもすっかー、カーテンでヴェールとかつくってさ。あ、お前が嫁ね」
「やだよ、俺がお婿さんじゃないと。先に俺が、お前の指に指輪を嵌めてやるんだから」
「ま、どっちでもいいけどさ。俺の方が女役させられてんだから俺の方が嫁であってんのかもな、あーウゼー!この巨根!」
「巨根とか廊下でいわないの!」
「やーいやーい巨根巨根!下半身も王様きどりか…って!!何で頭叩くの!」
「ちょっと聞くに堪えなくて。…じゃあ、恋、約束しろよ、指輪買うからちゃんと嵌めてね。邪魔だとかいって外さないでね」
「…外さねーよ!」
「今の間は何!」
時が、過ぎれば。
凍りついた心も溶けて、解ける。
恋は笑った。俺も笑った。青春の残り香のする廊下、軋む床を踏み鳴らして前に進む。
俺たちは今、となりを歩いてる。前を向いている。前に進める。
「明日のライブ、楽しみにしてるよ」
「ん。お前のハートはもう散々奪ったから、つぎは何奪おうかなー」
「んー、人生とか?どう?」
「それももう奪ったろ、結婚式すんならさー」
「あ、ほんとだ、じゃあ俺、お前になにも奪われるものなくなったね。童貞も攫われたし。」
「味をしめて俺のケツにすぐ突っ込もうするから童貞こわいわ〜」
「あはは、じゃあ今日は俺が下でもいいよ」
「え!まじで!………んー、いや、でも俺が下でいいや。ほら、嫁さんだし、俺」
「なんだかんだいいながらも結構気に入ってるでしょ」
「まーね、お前に体、作り変えられちゃったのかも〜」
「もう、恋ってば、下品だよ。じゃあ今日は遠慮しなくていいよね?」
「お前も大概だなー」
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