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「浜松!」
5mぐらい先で
怒ったような顔をして俺の名前を呼んだ、
野過の姿に
一気に血の気が引くような感じがした。
「……おー優心。おはよ」
と、ちょっと気まずそうに言ったあと、
ハルがこちらをちらりと見た。
普段温厚なイメージの野過から 怒りのオーラが放たれていて
俺も、ハルも、
他の人たちも、緊張が走った。
「…、」
みんなが見てる。
俺と野過を。
「喧嘩?」
「あの優心が?」
「浜松くんがなんかやったんだろ。じゃなきゃ優心が怒るわけないって」
と、周りから聞こえるひそひそ声に、俺は拳を握りしめた。
「…ハル、気分わるいから帰る」
俺はハルにだけ聞こえる声でそう呟くと、
えっ?と驚いた顔をするハルを置いて、
ぐるっと向きを変えて
元来た道を早足に引き返した。
そしたら「浜松!」と呼ぶ、野過の声が聞こえて、
胸が締め付けられるような感覚が襲ってきて、
俺は走って逃げた。
「浜松まって!」
野過の声が聞こえる。
バタバタと激しい足音も。
この足音は、俺の、
野過の、?もうわかんない、
こわい
俺は必死に逃げた。
けど、元運動部の野過と、
低身長で運動もできない俺とじゃ
元々結果は分かってて。
「浜松って…!」
ガシッと手を捕まれ、ビクッと肩が揺れる。
人気のない所まで来たところで、
野過に捕まってしまった。
俺も、野過もはーはーと荒い呼吸を繰り返してた。
「…浜松、ごめん。昨日は。けど、なんで逃げるの、俺、今朝も浜松の家まで行ったよ」
「…」
「嫌な思いさせたくてしてるんじゃなくて、俺は浜松と向き合いたいって思ってて…」
「…っ、」
胸が、痛い、
吐きそう。
ぐるぐるぐるぐる頭の中で言いたいこと、
言いたかったことが 掻き回されて
ぐじゃぐじゃになって
喉につっかえる。
…向き合いたい
って思ってる?
何に?
俺だって
向き合いたくて
だから昨日あんな恥ずかしいことも…
頑張って言ったんだよ。
けど野過は、できないって、言ったんだ。
だから、俺は、
だから……っ
俺はこれ以上何を
どう向き合えばいい?
野過と最後までするのを諦めればいい?
そもそもそうゆうスキンシップも諦めたらいいの?
今まで野過からキスしてくれたり
セックスしてくれたりした時は
俺が、したいなって思った時だった。
今、したいな。
でも俺から言うのも、俺ばっかりなのも
嫌だな 恥ずかしいなって
そんなことばっかり思ってて、中々自分から出来なくて
そしたらそのタイミングを見計らったかのように
野過がしてくれた。
多分、俺、したいって顔に出てたんだ。
だから野過はしてくれてたんだ。
野過がしたいからじゃないんだ。
いつでも俺が、
ひとりよがりで
馬鹿で、
ソウユウ事しか頭になくて
そんなどうしようも無いやつだから
だから上手くいかないんだ。
「…もういい」
ぎゅっと閉まる喉を
無理やりこじ開けるようにして
俺はそう口にした。
「え?」と、聞き返してくる野過。
俺は拳を握りしめると、
ゆっくりと野過を見て、
震える声で言ったんだ
「…もう、…ぜ、全部、しなくていい」
泣きそうだった。
泣きたかった。
けどこれ以上はじをかきたくたい。
その時、HR開始5分前のチャイムが鳴った。
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