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「大きくズレて完全に違うものになると、その世界は廃世界となる。廃世界はほかの世界などの全てから見捨てられ、無い世界として扱われる。この廃世界がこの世界の未来だ」
「見捨てられると何か困るんですか?」
思わず質問していた。
俊太郎が真面目に聞いていたことがよほど嬉しかったのか、男性は顔を綻ばせると凄い勢いで、「困るさ! 大問題だよ!」と叫んだ。
「世界同士はお互いが影響し合って補い合って存在しているんだ。その世界の時間が長く続くようにね。廃世界は孤立してしまうことでその世界だけが、他所の世界とは違う終息へと向かう。その終息は他の世界が選んだ終息よりも早くに訪れることが多い。廃世界になったと言うことは、いつ滅んでもおかしくない状態になったと言うことなんだ」
影響し合うとか補い合うのところがよく分からないが、平たく言うと滅亡まで秒読みになるということのようだった。
滅亡を阻止するのは映画でよく見る展開だ。そこでふっと気付き、目の前の男性をまじまじと見る。力があるから筋肉はあるのだろう。顔はまあ普通――髪型を直せば良い方に入れるが、ボサッとしていてダサっとした雰囲気なので結局華はない。華がない――つまり主人公ではない。
「それで貴方が世界を救っているの?」
主人公には見えないけど、という部分は言わない。俊太郎は失礼なことを言うのは心の中だけと決めている。常時半分くらいは意図せず漏れ出てしまっているが。
「君とね」
男性はピースをしたままだった手を銃の形にして俊太郎を指し、似合わないウィンクをした。似合ないのに完璧なウィンクだった。
「俺は関係ないと思いますけど」
「関係あるよ! この世界にいるみんなに関係ある!」
面白い話であったが、その妄想ヒーローごっこに付き合う気はない。話は終わったようだし、もう帰してもらおうと立ち上がる。
「あ! 逃げないでって言ったよね?」
実はまだ掴まれていた腕を凄い力で後ろに引かれ、ベッドに倒れ込む。ベッドは柔らかいが流石にこの勢いで心構えもなしに倒れると内臓が痛い。
痛みに顔を歪める俊太郎の上に、男性が馬乗りになる。そして俊太郎の両手を掴み、俊太郎の頭の上に持っていくと片手で束ねて押さえつけた。
両手の自由を失った俊太郎は焦るがもうこの体勢ではどうしようもない。覆い被さるようにして俊太郎を見下ろす男性の顔を見る。無表情で何を考えているのかよく分からない。
「あの、離してください。……もう帰って良いですよね?」
恐々尋ねれば男性は、「まだ話の途中だからダメ」と言った。
「じゃあ、続きもちゃんと聞くんで、手を離してください」
「二回も逃げた。信用出来ないからダメ」
この〈話が出来ない感じ〉に俊太郎の心拍数はドンドン上がっていく。やはりこの男性は第一印象通りやばい人だったのだ。
一つにまとめられて掴まれている手首に感じる力は強く、この筋力で殴られたらと考えると抵抗する気も起きなかった。
「わかりました」
俊太郎は男性を刺激しないように、大人しくこの体勢のまま話を聞くことにした。
「君には世界を救ってもらう。僕が司令塔で君は手足。君のその手で未来を掬い上げてもらいたい」
真面目な顔して馬鹿みたいな話をする男性を俊太郎はただ見つめた。クリスマスイブにさっき出会った得体の知れない男と、ラブホテルのベッドに押し倒されて未来を守れと言われて、受け入れられる人なんて居るのだろうか。
何と言えばこの男性から解放されるだろう。俊太郎は必死に考えた。
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