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「お待たせ〜。俊太郎、無事〜?」
あれから数十分待った俊太郎の元へ来た健は、やたら大きいキャリーケースを持っていた。
「ごめん。わざわざ来てくれてありがとう。……で、それ何?」
あまり見ないレベルで大きいそれをゴロゴロと転がしながら入って来たらそりゃツッコむだろう。
「あ、これ? これはさ。俊太郎を入れようと思って」
「俺……。生きている生身の人間なんだけど」
「何言ってんのさ、知っているよ」
健は笑ったが、俊太郎は笑えなかった。まさか自分は死体のようにキャリーケースで運ばれるのだろうか。
「入らないと思うけど」
「大丈夫! 空港にも持ち込めないような特大サイズを買ってきたからさ! 服とか脱げば入れるよ!」
健はテキパキとした動きでキャリーケースを開けて、中から大きなバッグを取り出した。
「これに服とバッグと靴は入れてね。……早くパンイチになってよ」
全く動いていなかった俊太郎に痺れを切らした健は力技で脱がしにかかって来た。
「いや、普通に出ればいいじゃん!」
死体ごっこはしたくないので俊太郎は必死に反論する。しかし、健は「一人で入ったのに二人で出てきたら不自然だから無理だよ」と聞かない。
「面倒臭いな〜」
健は俊太郎の服を破きながら脱がせた。健の時短術は脳筋すぎておかしい。
力で勝てずに下着一枚にされた俊太郎は諦めてキャリーケースに入った。弱き者が負けるのがこの世なのだから仕方ないと自分に言い聞かせながら。
ただ、コーヒーを奢るのはやめようと思った。
◇◇◇
「おかえり〜。シュン君は散々だったね。何で裸なの?」
五十嵐のボサーとした寝癖頭は任務前に見たままだが、俊太郎はイライラしていたので、無言で五本くらい掴んで抜いた。
「痛っ! DV反対!」
健は呑気に「裸じゃないよ。パンツだけ履いている」と言った。そんなことはどうでもいい。誰のせいだと思っているのか。俊太郎は健を睨んだが健は全く気付かず、呑気に話す。
「拓未が来ちゃった時は本当に焦ったよね〜。でもあの後は何とかなったよ。あの偽物USBの再現度相当高かったみたいで、教授はUSB内の動画を再生させるまで偽物だって気付いてなかったよ」
そう、いつも五十嵐の下準備は完璧だ。どう見ても年がら年中遊んでいるダメ人間にしか見えないのに、用意する小道具の作りは繊細なのだ。
「そりゃそうだよ! あれはたくさんの未来のデータを見て、予想して作ったものだからね! USBは同じ製品だし、中に入っているファイルの数も名前も陳列順も本物と同じにしてある!」
語尾の度にウィンクをかましてくる鬱陶しさと不釣り合いな仕事ぶり。完璧主義にはとても見えないが、人は見かけによらないのだろう。
「その偽USBはこちらで回収しておいたよ」
五十嵐はポケットからUSBを取り出して見せた。
証拠は回収しなければならない。目的を果たした後はまた偽物と本物をすり替える必要があり、それは本来学校に残る健の仕事だった。しかしハプニングによって俊太郎の救出が優先されたため、五十嵐が回収していたようだ。
「どうやってやったの?」
健が聞く。確かに五十嵐が学校に侵入したとして、どうやって怪しまれずに回収したのだろう。
「こんなこともあろうかとUSBには追跡装置を付けておいたから、学校から出た助手が一人なったタイミングを見計らって……職質をするふりをして奪った」
「警察のなりすましは犯罪だ」
「不法侵入だって犯罪だよ? ヒーローに犯罪は付き物なのさ」
そんなわけあるかと言いたかったが、五十嵐と話すのはめんどくさいのでやめた。
「ケン君はちゃんと本物を教員室に置いて来てくれた?」
「うん。教授の机の上にさりげなく置いといたよ。ありがたいことに散らかっていたから上手く他の物と混ざったと思う」
「オッケー、オッケー。じゃあ今日もミッション完了ってことでお疲れ様!」
五十嵐は、「また連絡するから」と言って奥に入って行く。健はチラリと俊太郎の格好を見た後に、「じゃあ俺はもう帰るね。お疲れ」と言った。
俊太郎はこのままでは帰れないので五十嵐を追う。健に破かれた私服代も請求しようと思った。
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