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スクリーンの映像が変わる。いろんな角度に傾いた沢山の杭が地面に打ち付けられている。杭には〈さまざまな出来事〉と書いてある。3D伊藤がその杭の間を歩きながら手癖のように近くの杭を殴って歩き始めた。それに対し、俊太郎と健は代わりに別の杭の角度をせっせと汗まみれで変えている。
「パワーもスピードもその全てが対等じゃない、いたちごっこさ。相手の行動が予測不可能だから君らは常に後手だ」
途方もない作業をやらされそうになっていることが分かり、俊太郎はげんなりした。しかし、足掻いても結局はこの仕事をやらされることになるのだろう。五十嵐の語る運命論が本当なら、無駄な抵抗は体力を削られるだけなので、五十嵐の話を信じ始めている俊太郎は流れに身を任せることにしていた。
「何故、拓未がズラした杭じゃない杭の角度を変えているの? それだと俺らも未来をズラしていることにならない?」
健の質問に五十嵐は喜んだ。ちょうど話したかった内容なのだろう。俊太郎は既にこの五十嵐という人物を理解し始めていた。
「ケン君、良い質問だね! 同じところをいちいち直すんじゃ追いつかないし、そもそも一度ズレた杭は元に戻してもズラされた跡が地面や杭に残るから元通りとは言えないんだ。だから〈こうしたらああなる〉の計算をして、変わりに別の杭の角度を調整して帳尻を合わせるんだよ。過程はこの際クソ喰らえで、結果さえ本来の形に似ていれば良しなのさ」
五十嵐はご機嫌で語った。
俊太郎は自分たちに与えられた仕事は、ヒーローとは名ばかりの後処理班だと理解した。五十嵐が計算して立てた計画通りに実行していくだけの仕事……達成感は期待出来ないだろう。
「理解してもらえたかな? そしたら次は君たちがミッションをクリア出来るように作ったアイテムを紹介したいから部屋を移動しよう」
スクリーンが天井に収納されていく。五十嵐は、内側もしっかり近未来的なドアを開けて、「さあ、着いてきて」と言った。
俊太郎は立ち上がると迷うことなく五十嵐の待つ出口へ向かった。健はいろいろ思うこともあったからか少し躊躇っていたが、結局俊太郎の後に続いた。
◇◇◇
「ここだよ! 僕たちの……言うならば秘密道具は、ここに全部保管している」
五十嵐に案内された先にあったのは、そこら辺の学校の体育館二つ分ほどのスペースに三階建てをぶち抜いたような高い天井を持つ部屋だった。右側の壁には天井までびっしりと引き出しがあり、左側には小型の飛行機が置いてある。他にも二十人掛け用くらいの規模のテーブルや巨大な液晶画面によく分からない大型な装置がたくさんあった。
「何ここ凄い!」
伊藤の一件以来浮かない顔をしていた健が目を輝かせた。確かに凄い光景であるが、俊太郎はあまりのスケールに恐怖を感じ、素直に感動出来なかった。
「そうでしょ! 自家用ジェットは二年前に買った物だから最新の型ではないけど人気の機種だよ。右の引き出しには使用した小道具を入れて保管する予定さ」
庭が広すぎる豪邸に着いた時から分かってはいたが、五十嵐はとんでもない金持ちだ。この施設を作るだけでどれくらいのお金がかかるのか、金持ちとは無縁な俊太郎には分からなかった。
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