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五十嵐は入り口の近くにあった小さな棚から何かを取り出して、それを俊太郎と健に見せた。黒い紐のようだ。
「これはワープチョーカー。これを全身の首という首に着けることで空間から空間にワープすることが出来るんだ。どういう原理かと言うと……まあ説明したって君たちには分からないだろうから割愛するよ」
五十嵐はそう言いながら、俊太郎と健にそれぞれ五個ずつ手渡した。それはただの紐よりかは少し重いが、よく見ると着用時に取り外しが出来るようになっている部分が金属で出来ている。その分の重さほどしかないように感じるが、本当にそんな機能が付いているのだろうか。
「さらにこのチョーカーをつけていると相手は顔を覚えられなくなる。見ている瞬間は認識出来るんだけど、目を離した瞬間から徐々に忘れていくんだ。さらに思い出そうとすると完全に記憶から消え、監視カメラにもかなりぼやけた顔しか映らない。……最高だろう?」
五十嵐は自慢気に語る。そんな五十嵐に健が、「ワープは何処からでも好きな場所に出来るの?」と尋ねた。
「いや、残念だけど条件がある。ワープはドアまたは窓が二つ以上ある密閉された空間でしか起きない。どこから密閉なのかがまだ不透明な部分があるんだけど……おそらく一、二センチ以下の隙間ならあっても問題ない。条件が揃った瞬間にワープが起こる。ワープ先も条件が揃っている場所に限られる」
なるほど、好き勝手にワープが出来る道具ではなく、条件が揃うとワープが起こる道具なのか。
「だから条件が揃ってしまうと強制ワープが起きちゃうし、ワープ先も計算である程度は割り出せるんだけど、ワープ先の条件が崩れると別の場所に飛ばされてしまうから注意が必要だよ」
それって結構危険ではないだろうか。別の場所が例えば何処かの企業の巨大冷凍庫や焼却炉の中だったらと考えるとゾッとする。青ざめる俊太郎に五十嵐は、「滅多に起こらないから大丈夫だよ」と笑った。
「じゃあ早速試してみようか。ここは常に小窓を開けているからチョーカーを着けても大丈夫だよ。二人とも着けてみて?」
そんな話をされた後に着けろと言われて着けられるわけもなく、俊太郎はチョーカーを握りしめたまま動けなかった。隣の健はいまいち危険性が分かっていないのか、手際良く装着していく。
「おい。ワープ先が危険な場所の可能性もあるんだぞ?」
黙って見ていられなくて俊太郎はお節介だと思いながらも健に言った。健はきょとんとした顔をしている。
「知っているよ。でも俺たちが世界を救うしかないんだから仕方ないじゃんか」
絶対に分かっていない。分かっている気になっているだけだ。俊太郎は健のことを大して知らないが、知らない人でも目の前で人が死ぬのを見るのは嫌だった。
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