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◇◇◇
「へぇ〜、入ってすぐは階段なんだ」
「山の中に無理やり作ったみたいで坂があちこちにあるんだ。ここは大きな階段が二つ」
難なく入場できた俊太郎と健は階段をゆったりと降りていた。
難なくと言ったが、一つだけちょっとしたハプニングはあった。入場ゲートでフリーパスを腕に巻いてもらう時に手首のチョーカーが見えてしまい、それにアルバイトの女性が動揺してフリーパスを千切ってしまったのだ。
新しいフリーパスを用意してくれたので大した問題ではないが……入場してからチョーカーを着ければ良かった。ちなみに俺の後ろに並んだ健も同じものを着けていたので、誤解は違う誤解となったことだろう。女性の想像力次第だが。
「あ! あれが月の広場?」
健が階段を降りてすぐのところにある屋外ステージを指す。俊太郎は頷いた。
「近くて便利だろ。時間もないしすぐに取り掛かろう」
◇◇◇
『良い子の皆さ〜ん! こんにちは〜!』
十四時ぴったりに予定通り、月の広場でヒーローショーが始まった。十分前になっても一組も客が来なかったので無観客ショーになるかと心配していたが、五分前頃に開演前の音楽が鳴り始めると徐々に小さな子連れの家族が集まって来た。
これだけ空いている平日に六組の家族が集まれば上々だろう。俊太郎と健も一応遠く離れた場所から見てはいるので、正確には七組の観客がいる。
『今日はアクヤクダーショーに来てくれてありがとう!』
今のちびっこ達の流行りは、平日の夕方十六時に週五で放送されている〈やみおちのアクヤクダー〉という何とも言えないアニメである。悪役が主人公のアニメのファンならば、良い子ではないのではないだろうか。
『あ! 大変! ヒーローが来ちゃったよ!』
このふざけた台本通りに演じていて笑ってしまわない司会の女性が凄い。ヒーローが来て、何が問題なのか。
「俺らのことかな?」
健がそっと耳打ちしてきた。
「……それだったら確かに大変だな」
今回の任務はこのヒーローショーもといアクヤクダーショーの遅延だ。俊太郎と健の存在はこのアクヤクダーショーにとって困ったものではあるだろう。
『みんなでアクヤクダーを呼ばなくちゃ! 大きな声で呼んでね! せ〜の! アクヤクダー‼︎』
八人の子供達とその親の声援を受けてアクヤクダーが登場した。このヒーローショーは三十分の予定だが、今日は一時間やってもらわなければならない。
頼んだぞ、アクヤクダー。バテないでくれと、俊太郎は心の中でアクヤクダーに声援を送った。
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