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「閉めるよ?」
健がドアノブに手をかけて言う。俊太郎は「いいよ」と言った。
健がドアをガチャリと閉めると、物に溢れた四畳半がカッと光に呑み込まれる。ふわりと体が浮き、ズンッと沈む。
辺りを見回せばそこには端に避けられた無機質なテーブルと複数のパイプ椅子、キャスター付きのホワイトボードがあった。左壁一面にある窓はカーテンで封じられている。五十嵐の計算通り、ここは市が貸し出している会議室のようだった。
ガチャリと音がしてドアが開き、五十嵐が入って来る。
「シュン君、ケン君お疲れ〜。幽界ランドどうだった? 楽しかった?」
任務前に見た通りの寝癖で、五十嵐の髪の毛は重力の影響を受けないのかといつも不思議に思う。どうでも良いことだが。
「何のアトラクションにも乗れないし、つまらなかった」
健がまたつまらないと言ったが、五十嵐の質問から予想出来た感想であり心の準備が出来た為、胸が痛むことはなかった。
「ええ~、シュン君は? 楽しかったんじゃないの?」
何故かやたら下品な笑みを浮かべた五十嵐に絡まれた俊太郎は、ムカついたので腕に付いていたフリーパスを千切って取ると五十嵐の顔に投げつけた。
「痛い! 何でそう暴力的なのさ!」
五十嵐にだけは言われたくない。
「ねぇ、五十嵐〜。次の任務はいつ? 来月?」
健が会議室の机を元あったと予測される場所に戻しながら尋ねた。
「うんとね〜。クラッシャーの動きが予測不能だから――まあ予測出来たらクラッシャーじゃないんだけど――とりあえずは未定かな。今週は無いと思う」
五十嵐は寝癖頭をボリボリと掻きながら答えた。
俊太郎も机やパイプ椅子を運びながら、「じゃあしばらくはトレーニングだけか」と言った。
五十嵐は頭を掻くのを辞めてギュルリと音が出そうな動きで首を動かして俊太郎を見た。急にホラーになるのは辞めていただきたい。
「いや、シュン君には覚えてもらいたいことがあるんだ。だからトレーニングの合間で良いから時間ある時に僕に声をかけてね」
「了解」
もっと高度な盗みのテクニックだろうか。それともピッキング?
ついこの間まで普通に暮らしていた、ちょっと足が速いだけの俊太郎には、この仕事をしていく上で覚えなければならないことは山ほどあった。しかし、健には必要なくて俊太郎には必要な技術とは一体……。
何故か少し嫌な予感がしたが、気のせいだと思うことにした。五十嵐は当然のように突っ立っていて手伝わないので、俊太郎と健の二人で会議室の復元作業をした。
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