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「う〜ん、それって素人に出来るものなの?」
「逆にプロが居るのか知らないな。やりたい人が気ままにやる、自由なスポーツだよ。ケン君の運動神経ならすぐに出来るようになるよ」
俊太郎は健の体を見る。上から下まで値踏みをするようにじっくりと。
健も五十嵐同様、着痩せをするタイプなのだろうか。見た目では筋肉があるようには見えない。ひょろりとした今時に多い若者って感じだ。
「そんなに見ないでよ」
健は恥ずかしそうにしゃがんで体を隠した。
「いや、筋肉あるように見えないなって思って」
「……俊太郎の方が華奢に見えるけど?」
健は悔しそうに言った。
確かに俊太郎は着痩せをするタイプだ。ゆったりとした服を好んで大きめサイズを選んでいるのが原因の一つだと気付いていてもそれを変えないくらいなので、別にそれを言われても何も思うことはない。自分と違って健は気にするのなら、今後は口にしないようにしようと俊太郎は思った。
「結構鍛えてんの?」
話を逸らそうと、俊太郎はとりあえず当たり障りないことを聞いた。
「う〜んと、そこそこかなぁ。でも体育は得意だったよ」
健に「腹筋でも触る?」と聞かれた。俊太郎は丁重にお断りした。本人が良いと言っているから問題はないのだが、俊太郎の気持ち的にセクハラみたいで嫌だった。
「ええ! 意外! ゲイってみんな筋肉が好きなんだと思っていたんだけど、それって僕の偏見だったのか!」
五十嵐が当然のように会話に割り込んで来る。そして当たり前のように代理カミングアウトをした。これから一緒に仕事をしていく以上、隠し通すのは難しいかもしれないが、まだ会って二回目でそんなことを――しかも本人の了承も取らずに言うなんて――信じられない。
「……俊太郎ってゲイなの?」
健は聞く。あからさまに軽蔑したり気持ち悪がったりはしていないように見える。しかし、心の中では何を思っているのか分からない。
ただ、ここで否定しても五十嵐が速攻割り込んで訂正するから意味がない。俊太郎には認める意外の選択肢がなかった。
「そうだよ」
何でもないことのように答えられたと思う。〈リンゴが好きなのか〉と言う質問に肯定するくらいの普通を俊太郎は意識した。
健もまた普通に「そうなんだ」と言っただけだった。
何も言われなかったことにひとまずホッとしながら元凶である五十嵐を見れば、何故か面白くなさそうな顔をしていた。こいつまさか修羅場を期待していたのか、という疑問が俊太郎の頭に浮かぶ。既に俊太郎の中の五十嵐の人物像は最低最悪だ。
何見ているんだよと睨めば、五十嵐はサッと視線を逸らした。五十嵐の下手くそな口笛は空気と一緒に掠れた音を漏らした。
「あの奥にあるのはアスレチック? 楽しそうだね、後でやってもいい?」
健が巨大アスレチックの方を指して五十嵐に聞く。
「あ、ああ、うん。そうだよ! もちろんアスレチックで存分に鍛えてくれ!」
五十嵐は思い出したかのようにウィンクをし、またこのトレーニングルームに関する長ったらしい説明を始めた。俊太郎はバレないように欠伸を噛み殺した。
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