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少し考えた後にXは、「こちらにとって美味しすぎるのが怪しいと思ったけど、君は僕がこの世界で好き勝手に動くのを防ぎたいんだね? ……いいよ、君の助手になる」と言い、五十嵐に右手を伸ばした。五十嵐は安心したようにホッと小さく息を吐くと、Xと握手をした。
「それじゃあよろしく。僕は五十嵐。あっちの小さい劣等感の塊が俊太郎で、その後ろにいるイケメンのヤリチン野郎が健。僕達は三人でこの世界の未来を救おうとしている」
この上ないほど失礼な紹介をされたが、俊太郎と健は今日の任務で疲れ切っていたので何も言わない。Xは失礼な紹介を気にも止めずに、「よろしく」と言った。
「よろしく」
俊太郎は歩み寄ることもせずにその場で、しかもいつもの無表情のまま言った。後ろに立っていた健は俊太郎の後ろから、やたらと硬い声色で「よろしく」と言った。まさかまだXにびびっているのだろうか。
「僕は……誠亞(せいあ)。こことは別の世界のクラッシャー。僕の世界には何人もクラッシャーが居て、他のクラッシャーと接触した時に何がどうなったか分からないけどタイムトラベルしちゃったんだ。数ある世界からこの世界に来たのは、きっとこっちでも何か隙が出来たんだと思うよ」
X――誠亞は伏し目がちにそう言った。全てを諦めたような生気を感じない横顔さえも美しい。華奢な肩は薄く頼りない。ここ世界よりも重力が大きい世界から来たからか、見た目からは想像もつかないほど体力があるのは分かっているが、ジャケット越しでもわかるこの線の細さは――。
俊太郎はワープ後に誠亞の腕を掴んだ時に感じた違和感の答えを見つけた気がした。これを聞くのはセクハラになりかねないが、ハッキリさせないでおくともっと酷いセクハラが発生する可能性があるので思い切って聞くことにした。
「誠亞って女性……で合っている?」
その場の時が止まった。実際に時間が止まることは無いが、この瞬間確かに四人の時は止まった。
誠亞がふふっと笑いながら、「そうだよ。よく分かったね」と言って、再び時間は動き出した。
「まあ僕としては性別にこだわりは無いし、どうだって良いんだけどね」
誠亞は初めて見せる朗らかな笑顔でそう言い、五十嵐は「そうなの? ちなみに僕はAセクだからね。大丈夫、安心して住んでね」と言った。
俊太郎は五十嵐のセクシュアティなんてどうでも良いと思いながら、五十嵐と誠亞が何か話すのをぼんやりと見ていた。健は話に着いて来られていないようで頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。俊太郎はそんな健の頭をポンポンと優しく叩きながら、「誠亞が戸籍は女性で、五十嵐が恋愛をしない人ってだけだぞ」と要約を教えてあげた。
何はともあれ、二〇二一年五月十三日、タイムトラベラーX――誠亞が仲間に加わってこの日は終わった。
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