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◇◇◇
小潮大学の秋葉原キャンパスに着いた健は、さっそくターゲットの居る三号館の四階へ向かう。途中で何人かの学生とすれ違ったが誰も健のことなんて気に留めない。数百人が通うキャンパスの全員を記憶している人なんていない。
ふっと女子のグループがこちらを見て何やら話していることに気付く。任務中でなければお望みのままに声をかけてRINGで繋がれた。しかし、その機会を逃したことにそれほどがっかりしていない自分に健は驚き、思わず足を止めた。
別の学部で別のキャンパスに通う女の子でも家事など、頼み事なんていくらでもある。それに何より女の子に囲まれて過ごすのが心地良かったはずだ。どう言った心境の変化だろうか。
そこで、今日のデートもヘアセット中に面倒臭いと思ってしまったことを思い出す。何か自分の考えが変わるような出来事があっただろうかと記憶を漁ってみても、特に何も浮かばない。
『シュン完了、了解。ケン待ち』
左耳のイヤホンから聞こえた五十嵐の声で、任務中であることを思い出す。慌てて早歩きで三号館へ入って行きながらイヤホンのボタンを一回押す。
『ケン了解。……シュン了解』
入ってすぐのところにあるエレベーターのボタンを押す。三つあるエレベーターの一つが一階に居たようで、すぐにドアが開いた。運が良い。
◇◇◇
四階に着いた健はターゲットが居るはずの教室のドアを開けて、まずは窓を確認する。開いているのを確認すると中に入ってドアを閉めた。
席を選ぶふりをしながらターゲットを探す。ありがたいことに廊下側の後ろの方の席にターゲットは一人で座っていた。
健はターゲットの二列後ろの席に腰掛ける。もう少ししたらターゲットに恋人からの電話がかかってくるはずだ。――クラッシャーである伊藤が未来を変えなければの話だが。
どうか計画が狂いませんようにと、居るかも分からない神に祈っていると机の上に置かれていた――ターゲットのスマートフォンが振動する。ターゲットは慌てた様子でスマートフォンを掴むと他の荷物はそのままに席を立った。
教科書はともかく財布まで置いて行くなんて不用心な奴だ。健はそう思いながら席を立った。
ターゲットが教室から出るのを見届けると、ターゲットが座っていた席の机に散乱するペンの中から、お目当ての蛍光ピンクのマーカーをサッとスる。そしてそれを袖の中に隠し持ち、教室を出た。
ずっと向こうの廊下の端で周りに気を配ることも忘れて結構な声量で恋人と話すターゲットを視認した後、ちょうど来たエレベーターに乗る。
八階のボタンを押した。マーカーはしっかりと左手に握り持った。
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