アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
10-4
-
◇◇◇
無事に任務を終えて五十嵐邸に帰ってきた健は玄関でチョーカーを外す。
「ケン君、お疲れ様〜。シュン君はもう帰ってきているよ」
五十嵐が寝癖頭を掻きながら出迎える。健は外したチョーカーを五十嵐に手渡しながら「不味いことが起きた」と言った。
「知っている。防犯カメラで見ていた」
そう言った五十嵐の声は任務中にイヤホン越しでしか聴かない低い声で、健ははっと五十嵐の顔を見る。五十嵐の顔は見たことがないほど無表情で冷たく、健は思わず小さな声で「怒っている?」と聞いた。
「怒っていないよ。相手はクラッシャーだし、不測の事態はいくらでも起こり得る。……言っておくけど、シュンにも非は無いよ。シュンが教室に入る瞬間にクラッシャーがエレベーターから降りて見られてしまったんだ」
五十嵐は道具置き場の方へ向かいながら淡々と話す。健はその後ろを黙ってついて行く。
「非があるとすれば僕かな。気付くのが遅れた。クラッシャーがエレベーターに乗った段階で……いやクラッシャーが大学に来るっていう予定外が起きた段階で二人に伝えておくべきだった」
五十嵐はいつもの癖とは違い、激しく頭を掻きむしった。数本の髪の毛がパラパラと床に落ちる。健がギョッとして立ち止まると、五十嵐も立ち止まり床の髪の毛を見た。
「ああ、最近よく抜けるんだ。気にしないで」
そう言う五十嵐の目元にはよく見れば隈があり、健は眉間に皺を寄せる。もう数ヶ月間一緒に任務をしている五十嵐が急に得体の知れない生き物に見えた。
◇◇◇
道具置き場で俊太郎と誠亞と合流した。二人は何か話していたが、健と五十嵐が部屋に入って来ると話すのを止めた。
「みんなもう知っている通り、今日クラッシャーである伊藤にワープが目撃された」
五十嵐は初めて見る真面目な顔付きで三人に話す。
「不幸中の幸いと言って良いのかは今後次第ではあるけど、相手はクラッシャーだ。どうせ行動は不確定で未知数。ばれたことに関してはあまり問題ないと思っている」
五十嵐は健のチョーカーをいつもの置き場に戻しながら続ける。
「問題はケンが自由に動けなくなるかもしれないこと。しかし、ケンの咄嗟の判断はとても良かった。だから人違いで通せるだけ通す。後はなりゆきで」
そこまで話すと五十嵐の顔と雰囲気がいつものだるんとしたものに戻る。
「まあいつでも僕らの行動は常に後手後手後手……。大して変わらないさ」
五十嵐はいつものように、ハハッと軽く笑い飛ばした。
五十嵐の言葉で少し気持ちが軽くなった健は、ここでようやく周りの様子を見る。俊太郎が責任を感じているだろうか――青ざめて震えているのが目についた。健はそんな俊太郎に何か言わなければと思うが何も出てこない。とりあえず口を開いてみたものの何も発せずに閉じた。
そうこうしているうちに誠亞が俊太郎の頭を撫でた。反射的に健は、そこでそうするのは自分の役割なのにと思った。何故そう思うのか、考えても分からない。分からないが目の前の光景は不快だ。
健は考えることを放棄して、俊太郎と誠亞から目を逸らした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
50 / 64