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◇◇◇
「待っていたよ」
五十嵐邸の玄関でそう言って三人を出迎えたのは誠亞だった。出会った頃のような冷たい無表情で健達を見ると、家の中に入っていった。
「誠亞! 五十嵐は生きているのか?」
俊太郎の問いに誠亞は答えない。三人は仕方がないので、ただ誠亞の後について行く。
道具置き場に着くと誠亞は迷わず大きなモニターの前に行き、そこで立ち止まった。
「俊太郎と健が来たよ。何故かクラッシャーも居るけど」
誠亞がモニターに話しかけると、パッとモニターの画面が真っ白に染まる。五十嵐と通話が繋がっているのかと思ったが、それは違った。
『俊太郎と健、はじめまして』
モニター越しに聞こえた声は、五十嵐とは全く違う――低く美しい男性の声だった。ゆったりと上品にそう言う男性の姿はモニターに映らず、画面は依然白いままだ。
「誰?」
健が聞くと、男性は『私はマイフレンド。AIだよ』と答えた。誠亞は静かに腕を組んでモニターの横に立っている。
健は意味が分からなかった。五十嵐を助ける為にここに来たのに、出てきたのは見知らぬAIって誠亞は何を考えているのだろう。――まさかこれも足止めなのだろうか。
「ああそう。誰でも良いけど五十嵐は? 死にそうなんじゃないの?」
健はモニターと誠亞を交互に見た。誠亞が「五十嵐は死んだ」と答えた。
「は⁉ 何で止めないんだよ! 助けろよ! 病気? 事故? なんだって事前に分かればある程度対処出来るだろ⁉」
健は誠亞に掴みかかる。力任せに揺さぶっても誠亞はされるがままで、浮世離れして綺麗な目は何処かをぼんやりと見ていた。筋肉の浮き出た健の腕を俊太郎がぎゅっと強く掴んだ。
「健、止めろ」
俊太郎の顔を見て、少しだけ冷静さを取り戻した健は、誠亞を掴んでいた手を放す。すかさず俊太郎が健と誠亞の間に体を滑り込ませた。
「……誠亞は見殺しにしたんだよ? 分かってんの? 俊太郎」
俊太郎は悲痛そうに顔を歪めると「仕方がないだろ。未来を変えるわけにはいかない」と言った。
健はその言葉にぎょっとする。俊太郎も五十嵐の死を変える気はなかったのだろうか。健がタクシーに押し込まなければ、ここに来なかった?
頭にカッと血が上る。
「自分がそういう運命だったとしても受け入れるの⁉ 受け入れられるの?」
至近距離でそう叫ぶが、俊太郎は俯いていて顔を上げない。健は「……それが好きな人でも?」と続けた。
もし俊太郎が死ぬ運命だと知ったら、世界が滅ぶのと引き換えだとしても、自分は俊太郎の命を優先するだろう。理屈じゃないと、健は思うのだ。
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