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思わず「は?」と漏らしたのは、健だったのか、俊太郎だったのか、はたまた両方だったのか――。分からないが、とにかく二人ともそう口から出てしまうような心情であった。
何を言っているのだと表情でも訴える健と俊太郎に、マイフレンドはまた笑った。
『私という存在、他の世界のこと――、君達は知らないことだらけだろう? その状態で、五十嵐に脅されたり乗せられたりして私達の計画に協力していた。しかし、ここらで君達が知らなくて私達が知っている情報を共有しようと思ってね。その方が良い方向に進むんだ』
五十嵐は、関係ありませんという顔をしてパカパカと酒を飲んでいる。慌てた演技は見れたものじゃないくせに、黙りは随分と上手なようで。マイフレンドの存在を自分が死ぬって時まで上手く隠し切った五十嵐に、健は冷ややかな視線を送った。
「五十嵐の勢いに誤魔化されていたし、疑う暇と余裕を与えられていなかったから追求するに至っていないが、おかしな点は多々あったからな……」
俊太郎は中身が半分ほどになったグラスをテーブルに置いて腕を組んだ。退院祝いのパーティーはここまでで、ここから真面目な話をするという意思表示に見えた。
健は別な理由で同じようにテーブルに自身のグラスを置いた。――この前のように酔って我を失って、さらなる失態をおかすことは避けなければならない。酒だけに。
もう酔いが回り始めているかもしれないと思った健は、新しいグラスに入れた一杯の水を一気飲みした。どうか薄まってくれ。
「おかしな点って何さ? 僕はとても上手に科学者だったでしょう?」
五十嵐は聞き捨てならないと眉間に皺を寄せ、俊太郎を睨んだ。――睨んでいても話の節々でアルコールを煽るのは忘れない。
「お前みたいなやつがワープ出来るチョーカーなんて大層な物を作れるのは、どう考えてもおかしいだろ……。もうはっきりと言ってしまえば、任務に関わる全て……マイフレンドがゴーストなんだろ?」
俊太郎は「もっと疑うべきだった」と最後に呟いた。
五十嵐がお手上げのポーズをして、誠亞とマイフレンドが上品に笑う。それが答えだった。――俊太郎は深くため息を吐いた。
健は一人、テレビの向こうのドラマを観ているような感覚になっていた。この仕事は五十嵐が軸となっていたのに、それが崩れてしまっては何が何だが……。
「え? 待って待って。一回整理をしたい」
このまま置いていかれてはいけないと、健は会話に割って入る。
「秘密道具を作ったのも任務を考えたのも……全部五十嵐じゃなくてマイフレンドなの?」
五十嵐は酒を一口飲んで「そうだよ」と答えて、また酒を飲んだ。
五十嵐がやっていたと思っていたことは全てマイフレンドが行っていた?
「ええ? じゃあ五十嵐って何をしていたの? この仕事において五十嵐って必要?」
首を傾げてそういうと、誠亞は珍しくハハッと大きく笑って、その拍子に酒が変なところに入ったのか激しく咽せた。俊太郎が誠亞に水の入ったグラスを渡すのを横目で見ながら、五十嵐が不服そうに「必要だよ‼︎」と叫ぶのを聞く。
見かねたようにマイフレンドが口を挟む。
『五十嵐が居なければ私は何も出来ない。ここにただ居るだけさ。それも五十嵐が居なければ叶わなかったわけだしね』
マイフレンドの落ち着いた喋りは妙な説得力を持つ。変な洗脳電波が出ているんじゃないかと、健は突飛なことを考えてみたが口には出さなかった。
「あー、五十嵐はマイフレンドの手足みたいな?」
やけ酒と言わんばかりにピッチを上げて酒をがぶ飲みしていた五十嵐が、その手を止め「ケン君とシュン君はその僕の手足だから、マイフレンドの手の指と足の指だね」と意味の分からないことを言った。
「生産性のないことしか言えないなら黙って酒を飲んでいろ」
そう俊太郎に一喝されて大人しくなった五十嵐は、もうさっきまで五十嵐の退院祝いパーティーだったことを皆に忘れられているようだった。
健ももちろんそんなことは忘れていたので、項垂れる五十嵐は放っておいて誠亞に話しかける。
「誠亞はマイフレンドの存在を知っていたの? 五十嵐がトラック轢かれた日、マイフレンドのところに俺達を案内をしたよね?」
「ああ、そうだね。僕は知っていたよ」
咽せたのが相当苦しかったのか――酒を飲むことは止めたらしい誠亞は、そう短く答えた。
「五十嵐の後釜ってことか……」
何やら考えていたらしい俊太郎がそう呟くと誠亞は「鋭いね」と言った。
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