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誰かが笑っている。耳に残る。好きになれない、耳障りな声だ。黙ってくれ。
『あはは、君がコノハのコイビトさん?なかなかイケメンだねぇ!』
体が動かない。違う、動かせない。
腕が抑えられてる。上に誰がいるんだ。
『オレなコノハが大っ嫌いなんだよなぁ、、、ほら、あいつ何でも出来んじゃん。そういうとこほんとに無理』
何言っているんだ。今のコノハさんがあんのが才能のおかげだとでも思ってるのか?あの人がここに立つまでどれだけ血の滲む努力をしたと思ったんだ。
『だからさぁ、、あいつの歪んだ顔見たいんだよね!そんなわけでユギくん?だっけ?協力してよ!!あはは、そんな顔しないで』
『大丈夫!ちゃあんとヤサシクしてあげるからさ!!』
そう言って俺の顔を容赦なく掴む。やめろ。そう言いたいのになにも声が出せない。光で顔が見えない。
『ふふっ、君の歪んだ顔も見れるし、なんか得した気分!』
_________!!!
「っは!!!ぁ、、なんだ、、、夢か、、、」
何かから逃げるかのようにベッドからはね起きる。悪夢でも見ていたのか、もう秋だというのに俺はびっしょりと汗をかいていた。夢の内容は全く覚えていないのになんとも言えない不快感だけが体に残っている。
(、、なんだこの感じ、、気持ち悪いな、、)
休日なのになんだか気分がどんよりとする。外はそんな俺を励ますかのように雲ひとつない快晴だった。
とりあえずベッドから降りて軽く伸びをする。
今日は一日するとこがないのでまずこの後軽くランニングをすることに決める。
(そうと決まれば着替えるか、、ランニング終わってからシャワー浴びよう。)
俺は数少ない荷物の中からランニングウェアを取り出してちゃちゃっと着替えを済ます。そして必要最低限の荷物だけをもち外へと足を伸ばす。
ちなみに丹兎先輩は今日早番らしく六時過ぎには病院へと向かっていた。
「秋って言っても、、、まだちょっと暑いな、、」
十月にも入ったが今日はなかなか暑さが残っている。中に半袖を着ていて良かった。
急いで上着をに脱いで腰に巻き付ける。
(とりあえず、、ここ周辺の道を頭に入れるか、、
、、!そうだここから病院まで行ってみよう。)
ここから病院までは地図しか見ておらず、まだ実際に自分の足で行ったことは無い。なので今日は病院の方まで行ってみることにする。
そうと決まれば早速頭の中に地図を映し出す。
「っし!!じゃあ行くか!」
体力には自信がある。恐らく走れば一時間ちょっとで着くだろう。俺は入念に準備運動をしてゆっくりと走り始めた
(たしかここら辺ってどっかの外国の街と姉妹都市になってんだよな、、先輩なんて言ってたっけな、、)
俺たちの住み、勤務するこの街はヨーロッパのとある都市と交流の歴史が深く、街並みも影響を強く受けているらしい。俺がその事を忘れていると知ったとたん先輩が教えてくれたのだか、疲れていて半分聞き流していたせいで何となくにしか頭に残っていない。
レンガ造りの道の上には所々イチョウや楓の木などが植えてあり今の時期は紅葉がとてもあでやかに青空とマッチしている。走っていて目に映る鮮やかな情景に自然と顔がほころぶ。
(そうだ、、どうせなら少し深い道に入ってみるか。ちょっと探検みたいでなんか懐かしいな、、)
もっと美しい場所を走ってみたいという欲が顔を出したため俺は頭の中に予定していたルートより少し奥に入った道を行ってみることにした。ここら辺は少し深く入るだけでかなり自然が豊かになる。
「そうと決めたら、、こっちか、、」
俺は目の前にある少し舗装がさびれてしまった道を進む。
元々は使われていたのであろう、レンガ造り自体はしっかりとしている。周りはなにかの植物でアーチが作られている。
(なんの花だろうな、、無難にバラってところかな)
ペースを落としゆっくりと歩きながら周りを見晴らしてみる。ここまで既に三十分以上走っているので少しクールダウンもかねて息を整えながら進む。
やはり少し奥に入っただけでもうかなり木が生い茂っている。流石、自然をうりにてしている街なだけある。
(、、?なんだあれ、、こんな所に道か?)
ふと目線を上げた先にあったのは周りよりも少しだけ丁寧に手入れをされているような小さな小道だった。まるでおとぎ話の中の小人が使っていそうな雰囲気が漂っている。
何となくその道に入ってみたい、というなんとも単純な考えで今いる道を逸れ小道へと入ってみる。
そこは一本道なようで時折ぐねぐねとしながらもただひとつの道を辿っていく。
そうして少し歩くと目の前にぽつりと佇む大きな庭園をもつ屋敷があった。周りは花垣に囲まれていて中央には中世ヨーロッパを思わせる門が設置されている。
ふんわり鼻腔をくすぐる色々な花の香りに導かれてそっと門の前へと誘われる。
(でっかい屋敷だ、、、こんなのあったのか、、)
少し背伸びをして中を覗いてみるとそこには色とりどりの美しい花々と茜や山吹のパッと鮮やかに染まった葉の数々が一面に広がっている。
俺はもう少し見てみたいと少し身を乗り出そうとしたその時、、、
「おやっ?どちら様ですか、、?」
突然門の向こうから声がしたかと思うと次には門が少し開かれていた。門に身を預けていた俺は支えがなくなりその場に尻もちをついてしまう。
「あわわっ!すいません!?大丈夫ですか??」
声の持ち主と思わしき人が急いで近くに寄ってくる。
そして俺に手を差し伸べ少し困ったような表情で話しかけてくる。
「すいません、、驚かせちゃいましたね、、、お怪我はありませんか?」
俺は差し伸べられた手をありがたく受け取りその場に立ち上がる。
「いえ、、、俺の方こそ勝手に覗いてしまってすいません、、その、、すごく美しい庭園ですね、、」
するとその人は少しきょとんとした後あはは、と豪快に笑い始める。
改めて俺に手を貸してくれた人を見てみるとくすんだピンクブラウンの髪をセンター分けにしている目は吸い込まれそうなくらい美しい赤紫色だった。
「ありがとうございます。うちの庭綺麗でしょう?僕の身内が大切に世話をしているんです。」
「そうなんですね、、本当に綺麗な庭です。まるで桃源郷みたいだ、、」
俺の言葉を聞くとその人はパッと顔を輝かせる。
庭を褒められるのが余程嬉しいのだろうか、俺の目線の少しだけ下にある顔は誇らしげだった。
「お名前を伺ってもいいですか?俺は、、、ヨウとでも呼んでください。」
「柚木です。柚木ケイ、今日はここら辺を散歩していて、、」
ヨウさんはそれを聞いて、
「ケイ、、ケイさんですね!ケイさんはこの後ご予定はありますか??なかったらぜひ俺とお茶をしませんか?今日は俺もとても暇で何をしようか考えてたところなんです!」
俺の手を取りニコニコと尋ねてくる。そこはかとなくこの有無を言わせずに圧をかけてくるような喋り方に真っ白な彼の姿が頭をよぎる。
(なんか、、社さんに似てる気が、、、)
身長も俺より少しだけ低く、社さんと同じくらいだろうか
双子と言われても納得できるほど雰囲気が似ている。
しかしどこか引っかかる、、、
雰囲気は確かに社さんに似ているが、顔が他の誰かと似ている気がする。だが漠然としているため俺は思い出すことが出来なかった。
「どうですか??よろしければ庭のテラスに机を出しますよ!!」
(まぁ、断る理由もないか、、、)
この後に急な予定がある訳でもない。それにここから病院までの抜け道を教えて貰えるかもしれないと思い俺はヨウさんとお茶をすることにした。
「なら、、お言葉に甘えて。ぜひ、、」
するとヨウさんはパッと花が咲いたように笑い俺を中へと引き入れる。見た目に反してなかなか力強い人だ。
「わーい!!じゃあ行きましょう!今日は暖かくて良かったですね!そうだ、同居人がお菓子を焼いておいてくれたんです!それもお出ししますね!」
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