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よく晴れた四月。今日は待ちに待った高校の入学式だ。入学式と言えばの桜は例年通り葉桜になっていて、辺りには散った桜でピンク色の絨毯が出来ている。入学式に桜がちょうど満開なのはどの県なのだろうかと、どうでも良いことを考えながら桜の絨毯を歩く。
蒼太が今日から通うこの真新しい校舎は清潔感のある白に大きな窓が特徴だ。校舎内に入り、先輩方に案内されて体育館へ向かう。
体育館には既に半分くらいの新入生がパイプ椅子に座っていた。お喋りをしていいのか、ダメなのか計りかねて、みんなもじもじとしている。
自分の席に向かう途中、何人かの生徒が近くを通ったタイミングで蒼太のことを見た。――アルファとオメガの人達だ。
体育館はさまざまなアルファとオメガのフェロモンの匂いが混ざって大変なことになっている。何とか席には着いたがあまりの匂いに吐きそうになった蒼太は口元を押さえた。
「大丈夫?」
小声でそう聞かれた瞬間、爽やかな匂いが蒼太を包む。後ろを振り向けば、信じられないほど整った顔立ちの男の子が心配そうに蒼太を見ていた。――アルファだ。
「……大丈夫。ここ匂いきつくない?」
蒼太も小声で話す。
後ろの席の男の子は申し訳なさそうに眉を下げて、「ごめん。俺の匂いもあるから」と言った。
蒼太は慌てて、「いや、それはお互い様だから。それに君の匂いは爽やかだよ。柑橘類みたいな」とフォローする。蒼太は自分がどんな匂いかは分からないが、この男の子の匂いが爽やかなのは分かる。
男の子は小さく笑った。
「爽やかな匂いなんだ。知らなかった。君のはえ〜っと、表現出来ない」
考え込んでしまった男の子は、表情がコロコロと変わって面白い。蒼太も音をあまり出さずに笑う。そして少し意地悪く言った。
「表現出来ないほど臭いんだ? ごめんね」
男の子は冗談だと分からなかったようで、酷く慌てて口をパクパクとさせた後、「違う‼︎」と叫んで立ち上がった。
周りの視線が集まる。ドジをして注目を集めるアルファなんて蒼太は初めて見た。
慌ててその場にしゃがみ、隠れようとする男の子に、蒼太は「冗談だよ」と囁いた。
「酷い……」
恨めしそうに見上げて来る顔はやっぱり現実離れした美しさで、男の子がアルファであるのは紛れもない事実なのだが、蒼太はこの親しみやすい男の子となら対等な友達になれるような気がしていた。
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