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1堕ちていく呪い
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あの時俺は死んだ
「山菜採りぃー?」
「はい…山は近くの!…バスで30分…」
亡き祖父の知り合いが管理する山
外出時は監視員も付いてくる
だがこの監視員は自分が出かける事に良い表情は見せない
「ダメ…ですか?」
恐る恐る聞く
「別に…特に拘束も制限も設けていない」
「あ、ありがとうございます」
いつもお世話になっているこの人の為にも
「うまい鍋作りますね!」
「ああ、そう…」
「あ!これもだ!」
記憶を辿りに山菜が生えていた場所を探し
篭の中に摘んだ山菜を入れる
「今年も良い山菜が採れた」
皆で山菜を食べる姿を想像する
「〆も考えないとな」
ウキウキしながら昼食のおにぎりを頬張る
「先生や脹相にも食べさせたかったな…」
憂太達や新しく高専に入ったという伏黒という学生との鍋パーティーは楽しみだが
やはり兄や好きな人は別格で
「………」
悠仁は俯いた
その様子を監視員は見ていたが
「あれ?」
ふと上を見上げた
「どうしたん?」
「あそこの花」
高い場所に咲いている黒い花
「ああ、黒百合」
北部の高山植物で悠仁には馴染みがあるが
監視員には珍しいのだろう
「採って来ます」
普段のお礼に採取しようと腕を伸ばしていたら
とんっ
「えっ?」
突き飛ばされた
「死んでしまえ!宿儺の器」
怖かった
特級呪物両面宿儺の指を飲み込んだという少年
異様な雰囲気はなく
ごく普通の中学生
高校受験の勉強に悩み
テレビ番組が好きで
友人に囲まれている
これと言って特徴もないが時おり見せる不穏な呪力
目の下に現れる謎の目と口
「彼は普通の非術師だ。何の力もない」
上からの説明に監視員の仲間と共に不信感しか無かった
「もう殺してしまおう!」
「そうだな」
自分達が手を下せば足が付く
自然に事故死に見せかけねば
でもどうやって?
思案していたところに
「あの…山菜採りに行きたいんですが」
相手が誘ってきた
山菜採りの序でに登山を楽しんだ虎杖悠仁を崖の近くに誘い込み
突き落とし突き飛ばされた際に見せた表情は驚きからの悲しげ…
いや
「ケヒッ!小僧を怒らせたな?」
笑顔
「まさか…」
目の下に現れた両目と
腕に刻まれた入れ墨のような模様
莫大な呪力
「両面…宿儺」
「貴様のお陰でこちらに出られた。礼を言うぞ」
バシュッ
監視員の顔を切り裂き
崖に突き落とす
「もしもし!人が崖から転落しました!」
丁度ハイキングに来ていた別の人間が通報し宿儺は崖下に降りる1
「…あんたの事信用してたのに」
暗い表情の悠仁が花を握り締める
「そんなに俺の事嫌いだった?」
冷たい視線は感じていたが
「仕方ないよ。伝説の特級呪物が顕現したら怖くて仕方ない」
隣に立つ男が悠仁の耳そばで囁く
「君が悪い訳じゃないのにね」
「あっ!さっきはありがとうございます」
崖から落ちそうになったとき
「危ないっ!」
抱き止めてくれた
「別に気にしないで。君は大切な仲間だから」
ニコリと笑う
「仲間?」
「うん。君のお兄さんも助けてあげる」
「脹相の事?」
「うん。高専は君達を裏切ったんだ」
拳を握り締める
「脹相は無事?」
「今の所は」
「あいつら…やっぱり信用しちゃいけなかったんだ!」
怒りに震える悠仁に
「取り敢えず君、死んでくれる?」
「…はい?」
高専
「脹相」
瞑想する脹相に誰かが話しかける
「誰だ?お前」
「誰デモ良い。高専ト呪術界はオマエノの弟を死刑対象ニシタ」
「…っ!」
脹相の瞳が見開かれる
「弟ヲ助けタイか?」
「当たり前だ!俺は弟達の為に生きてる!」
立ち上がろうにも呪符が邪魔をする
「ちっ!」
忌々しそうに呪符を見る
「助けヨウカ?」
「いや良い。それよりお前は去れ。俺の術に巻き込まれたく無ければな」
ぎっ
ぎち
ミシミシと筋肉がきしむ
「大丈夫か?」
「黙ってろ!お兄ちゃんに出来ないことはない!」
青筋を浮かべる
「おい!何をやってるんだ!」
異変に気づいた見張りが駆け寄る
ビリッ
呪符を引きちぎった脹相から血が滲む
「何をしている…だと?」
「ひぃっ!」
「お前達の方こそ俺の弟に何をした!」
両手を合わせる
「お前達は絶対に許さない」
「恐ロシイ力ダナ」
物陰に隠れていた人物が姿を表す
「弟との約束で殺さないようにしていたが、そうも言ってられない」
「見張リガ来る前に逃ゲルゾ。オマエノ弟ハ…」
「居場所は分かる。お兄ちゃんだから」
「イヤ、ソレハナイ」
「間違いありません。親戚の悠仁です」
顔面は潰れていたので
身に付けていた衣服とスマホで悠仁だと確認する
「彼は友人に山菜鍋を振る舞うと張り切っていました…」
もう1人の監視員が確認し
ほくそえむ
「彼には私以外身寄りが無いのでこのまま火葬にします」
悠仁の自宅
「はあ…やっと役目も終わりか」
悠仁の衣類や荷物をごみ袋に放り込む
「しかしあいつは何処に行ったんだ?」
宿儺の器を殺害した後消えた同僚
「まあいい。俺もしばらく休む…何だこれは?」
いつの間にかテーブルに置いてあった小さな花瓶
そこには黒い花が挿してあり
「それ黒百合って言うの。高山植物」
「ひいいっ!」
死んだ筈の虎杖悠仁が同僚の衣服を身に付けていて
「あんたさあ、俺を殺そうとしたら脹相が怒るのって分かんなかった?」
座ったまま後ずさる男の背後に
「俺は弟の為に高専に居ただけで高専側に付いたつもりはない」
脹相がしゃがみこみ
男に自身の血液を流し込む
「俺、何にもしてないよね?先生が殺されたのは悔しかったけど、普通に高校に通って大人しくしてた」
無表情で見下ろす
「これも見つけたからあんた達に渡すつもりだった」
呪符に包まれた指
「何でかうちの部の先輩達が持ってた」
こっそり盗み出し
渡す予定だった
「それは保管すべき特級呪物…」
「もう良い…あんた達の敵になってやるよ」
ゴクン
指を呑み込む
「ひぃっ!貴様そんな事をしてただですむと思う…がっ!」
「俺の血は毒だ。好きな時に術を発動出来る」
「ぐああああ!」
激痛と共に悶え苦しむ
「そうだ!この花あんたにあげる」
コトン
男の側に置く
「これさっき教わったんだけど。こいつの花言葉は…呪い…」
「お前達が呪ったせいだ。自分の愚かさを噛み締めて死ね!」
もがき苦しむ男に背を向けフードを被る
「必要な物は纏めたから行こうか」
「ああ」
男に背を向ける
「待って…ぐれ…助け…」
バタン
扉は無情にも閉まった
「脹相ごめん…嫌なことさせた」
外に出て脹相に抱きつく
「気にするな。お前こそ大丈夫なのか?」
悠仁の頭を撫でる
「俺は平気…ただ…高専なんか…五条なんか信じなきゃ良かった…」
途中から声が震える
「あんたにこんな事させるなんて」
「心配するな。俺はお兄ちゃんだ。弟の為なら何でもする」
「ごめん…ありがとう」
「あのさあ、そろそろ良いかな」
「もうちょっと」
声をかけた男に脹相が答える
「ごめんなさい。大丈夫です」
涙を拭う悠仁に男が笑いかける
「これからなんだけど俺達につく?」
「俺達?それよりお前は誰だ?俺の弟に何のようだ?」
脹相が間に入る
「うん?正確には君の弟じゃなくて、宿儺と君だ」
「あんたも呪詛師か何か?」
不思議そうな悠仁に
「こいつは呪霊だ。恐らくは特級」
脹相は身構える
「お前も俺達の敵か?」
「いやいや!俺は君達の味方だ」
男は両手を上げ無抵抗を示す
「脹相。この人俺を助けてくれたんだ」
「そうか。それはありがとう」
頭を下げる脹相に苦笑し
「大事な宿儺の器だしね。それより行く場所が無いなら俺達と一緒に居ようよ。君達の兄弟も探してあげるから」
ドキン
「それは俺とあいつの契約の事を言ってるのか?」
脹相が反応する
「勿論。あの時叶えてあげられなかった願いを叶えるよ」
悠仁に振り向く
「君の願いもね」
「俺の…願い…」
ずっと叶わなかった
時に騙された
「本当に叶えてくれる?」
「勿論!」
笑顔の男に顔を上げる
「俺…あいつを殺したい!」
守ると言っておきながら師匠のように自分を殺そうとした
「五条悟を殺す!」
にやあ
「良いね!君」
「ケヒヒッ!呪いをかけたな小僧!」
生得領域内で宿儺が笑う
「良い良い。貴様自身が呪いとなれ」
裏切り
怒り
憎しみ
「これぞ人間の業よ」
虎杖悠仁と言う呪いが今誕生した
「絶対に許さない!五条悟!」
続く
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