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その日の夜。夕食やら風呂やらを終え、二人でベッドの上に座ってくつろいでいると、ふと、透が棚の方へ行った。何かなと思っていると、スケッチブックと鉛筆を取り出してきた。
ベッドの上へ戻ってきて、ぺらぺらとページをめくり、白紙のページ。そこへ彼が鉛筆を走らせ出したのを見て、結弦は密かに感動していた。画材は全て捨てたと言っていたが、それくらいは残してあったらしい。
ぬ、と彼の顔の横に自分の顔を潜り込ませ、何を描いているのか拝見させて頂く。
透が描いているのは、この部屋の景色だ。机とか、テレビとか棚とか。
この景色だけの話ではないけれど、実際に見るとどうってことないのに、透の絵になって見るとやたら素敵だと思えるのは、つくづく、不思議だと思う。
さっさっと手元を動かす透は、楽しそうに見える。やはり透は、心からは、絵を描くことを嫌いになれないのだろう。
そうだよなあ。幼いときからずーっと続けてきて、もはや生活の一部となっていること。一度嫌いになったとしても、完全にやめるのって難しいのかも……、
「ほんとうまいね」
「ありがとう。……久し振りだよ、絵を描く気になったの」
結弦は、透が描いたものは全部好きだった。べらぼうに上手くて、絵に関しては素人の結弦はそれだけで感動するし、透き通るような色使いと、繊細さと温かさ。まるで、透その人みたいで。
やがて透の手が止まった。思ったところまで描けたらしい。そして、透がこちらをちらりと見やる目。その目のーーー熱。
透がスケッチブックを閉じて、鉛筆と共にベッドの下へ置いた。その後そっと抱き締めてきて、
「ね。……いい?」
「うん」
短い、会話。身体を離し、透を見ると目が合った。どちらからともなく寄せる、唇。
透の手が結弦のTシャツを捲って、ひたり、触れてくるのは鳩尾の辺り。そこからさわさわと身体の側面全体を撫でられると、身を捩りたくなってしまう。
身体を離すと透が自分の服を脱ぎ出したので、結弦も同じように、Tシャツを脱いだ。ズボンはまだ、脱がない。
そっと押し倒してきて、結弦は素直に仰向けに寝転ぶ。
透が、首筋へ顔を埋めて吸いついてくるのが分かった。その辺だとワイシャツを着たら見えないから、いくらでも痕をつけてくれていい。
「やっぱり好きだ。結弦のこと……」
「僕も」。言いながら、透の背中へ腕を伸ばす。ぐっと抱き寄せると、ぴったりと重なる身体。伝わってくる、彼の温度。
ああ、このまま溶け合って、ひとつになってしまえたら。
どんなに幸せだろうかと。こういうとき、結弦のいつも思うこと。
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