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楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。仕事のときの数倍のスピードで時は経ち、もうここを出なければならない時間となった。
両肩に鞄を下げて、結弦は透と道を歩いている。透が最寄りの駅まで、送ってくれるのだ。
あと一、二分で着くというところで、
「あのさ」
「あのさ」
二人同時に、口を開いた。顔を見合わせ笑ってから、透の方に先に言ってもらうことにした。
「この休み、結弦に来てもらってほんとによかったなって。お礼、言おうと思って」
「そんな。僕の方も、この連休来れてよかったって話そうとしてたところだよ」
「そう? 嬉しいな」
もう駅が見えてきた。結弦は少し、歩く速度を緩める。
「……会う前は本気で、俺なんか結弦と別れなくちゃならないと思ってたんだけど。結弦、別れないって言ってくれて助かった。別れられてたら俺、もう駄目になってたよ」
「ふふ。正当な理由もなしに、簡単には別れてやらないよー、僕は。……ていうか、またしばらく会えなくなっちゃうけど。次会ったときに変わり果てた姿〜、とかだったら嫌だからね」
「それは大丈夫だと思うよ。結弦がいてくれる限り……ね」
「手首は切ってると思うけどごめん」と言ってくる透の顔に胸が苦しくなったところで、
ーーー駅に、着いてしまった。
小さい無人の駅だ。改札はなく、電車に乗らない透もホームまで来ることができる。結弦の他に、二人、電車を待っている人がいる。
電車が来るまで、あと五分ある。二人でホームのベンチに腰掛けた。
透の横顔。彼の家を出る前にしてきたけれど、もう一度、キスがしたいと思う。周りに人がいるので、やらないけれど。
「なに?」
結弦の視線に気づいた透が、声を掛けてくる。
「なんでもないよ」
「そう?」
にこり、微笑む透。「キスでもされるかと思ったよ」冗談混じりに言う彼に、どきりとする。
「よく分かったね」
「あ、当たってた?」
「うん。外だし、しないけど」
「ふふ……。また次会ったときのお楽しみ、だね」
「うん」
「次」という言葉が透の口から出たことに安心感を覚えつつ、がたんごとんと音が聞こえてきて、結弦は立ち上がった。続いて透も立ち上がる。電車が止まり、ドアが開き、「じゃあ、また」と手を振り合って車内へ。ドアが閉まって電車が動き出して、見えなくなるまで。透は、見送っていてくれた。
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