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出張先へ帰る前に、行く道にあるから、実家に寄るだけ寄っておく。
父は仕事で、妹は大学でいないけれど、母はもう働いていないので家にいた。久々の息子の顔を普通に喜んでくれ、結弦は二時間ほど、ここでゆっくりしていくつもりだ。
リビングのソファ。完全に家モードのテンションとなり、点いていたテレビを見るとはなしに見ながら、結弦が思い出しているのはこの数時間で幾度目か、昨晩のことである。
あまりに幸せだったから、何度でも思い出す。そしてその度に辿り着く結論、「やっぱ透好きだ……」。
不意に、きしきしとソファが揺れた。母が隣に腰掛けてきたのである。
それを一応認識だけはしつつ、透のことを考え続けていると、
「ねえ、出張先でかわいい子とかいないの?」
「………」
……その話か……。
「いないこたないけど」
「声かけてみなさいよ〜、あんたの顔なら一人くらいなびいてくれる子絶対いるから」
「……気が、向いたらね」
「もう、いつもそういうこと言うんだから」
いつになったら孫の顔が見れるのかしらねえ、と言ってくる母に、結弦は心の中で思い描いた妹の肩へぽんと手を乗せ。「里穂、任せたからな」と声をかけておき、同時に覚える、緊張感。
母さんはーーー家族は。透のことを知ったらどんな反応をしてくるのだろう。
透と生涯を共にしたいなら、絶対いつかは言わなければと思っている、けれど。
言えない。
別に、自分の家族の雰囲気からして、驚きはしても気持ち悪がるまではない……かも知れないが。
皆、結弦が高校の頃からずっと男と付き合っているなんて微塵も思っていないし、そもそも、男には女、女には男が当然であるという頭しかなく。
いつまでも逃げていてはいけないと、思うのだけど……。
「はあ」
思わず出てしまったため息。「どうしたの」と聞いてくる母に、「何でもない」と答えることしか、今の結弦にはできなくて。
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