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小出からクリスマスパーティーに誘われた爽は再び雅を誘った。
なんで人のデートに付いて行かなきゃなんないんすかと言う雅を拝み倒して、爽は同行の約束を取り付けた。
子供のデートに同伴する保護者みたいだと文句を言ったが、雅は爽をつつくチャンスでもあるかと思いパーティーに参加した。
「イルミネーションどうでした?」
「きれいだった。あれ凄いな」
クリスマスパーティーの後、小出とイルミネーションを見に行った爽に雅が聞きたかったのは小出との進展具合だった。
しかし、返ってきた答えはイルミネーションそのものの感想。
「じゃなくて」
クリスマスが終われば年末進行。当然、残業が増える。
それでも社長の「家族は大事にしろ」という口癖が効いているのだろう、19時頃ひとりが退社し、オフィスの照明は爽と雅のいるところ以外は消されている。
ようやく制限付きながら残業が認められた爽は、目処がついたところで切り上げようとパソコンの電源を落とし、雅に「おごり」と缶コーヒーを持って行った。
そして「お先に」と言う爽に雅はイルミネーションはどうだったのかと聞いたのだ。
その答えが「きれいだった」。
どこまで鈍いんだと雅は頭を抱えた。
「手ぐらい繋いだんですか?」
「? なんで?」
「だってデートでしょ」
「…デート、なのか?」
思わず眉間に皺を寄せて雅は「少なくとも小出さんはそのつもりだと思いますよ?」とつっけんどんに言った。
小出の心情を思うと可哀想になって雅は口調が強くなってしまった。
直後、しまったと雅が慌てる。
今の爽にはネガティブな言葉や他者の負の感情はダメージが大きい。
自分が受ける影響とは異なるのだからと、過度にならない程度に気を付けていた。
爽は順調に回復しているとはいえ、まだ長い過渡期の途中だ。
せっかくここまで来たのに逆戻りさせたくない。
あの疲れたような顔と表情のない目を見るのは、もう嫌だ。
壊れ物を扱うような真似は、却って彼を傷つける。
しかし、乱暴には扱いたくない。
大事だから。大切な―
「すいません。きつい言い方して」
「いや、いいよ。俺の方こそなんかすまん」
「何も爽さんが謝ることないです」
沈黙が二人きりのオフィスに満ちる。
エアコンファンの音、パソコンの動作音、蛍光灯の発するノイズ。
爽が飲みかけの缶の中身を空にした。
「あのさ、俺、そういうの良く分かんないんだよ。お前から見て小出ってさ、つまり俺にアピってるわけ?」
「―多分、かなり」
「…そっか」
だとしたら小出に申し訳ないことしたな―。
後輩として、単純に楽しい仲間として接してきた。
同僚以上友達未満、そんな感覚だった。
今まで心配してもらったり、仕事を助けてもらったり、そんな嬉しく有難い小出の行動が、恋愛感情からとなると違うものに感じてしまう。
もちろん小出が女性というのは分かっている。
しかし、性別などどうでも良くて、同志のような、部活のチームメイトのような、そんな目で見ていた。
だから助け合う、支え合うのは当たり前のこと、そう捉えていた。
計算ずくのアピール。交際に持ち込むための手段としてのヘルプとサポート。
打算的性格ではない小出がそんなことはしないだろうし、そうは思いたくない。
しかし、そう感じてしまった。
しかし―、と頭は否定する。
あの小出がそんな手練手管を恋愛で使えるのか?
そんな受け取り方はしちゃいけないんじゃないか?
そう考えると余計、彼女に申し訳ない。
「なぁ、潮海、俺、小出に謝ったほうがいいのかな?」
「なんでです? 断るってことですか?」
「いや、そうじゃなくて、小出のこと、そう見てなかったから、色々と気付いてやれなくて悪かったなって…」
「これから気付いてあげればいいんじゃないですか?」
これからいくらでも距離は縮められる。
今気付いたなら今から小出の気持ちに応えていけばいい。
なるほど、そうだな。
雅の言葉にうなずいて、爽は礼を言った。
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