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「綾登、いってらっしゃい」
「はうと、いこうよ」
「俺は授業があるから行けないんだよ」
4月になり本格的に保育園へと通うようになった綾登はぷっと頬を膨らませる。
毎朝こうだ。
ならし保育のお陰で保育園に行けばお友達と遊べると理解し行くこと自体は渋らない。
が、楽しいから兄も一緒に行こうと毎日誘ってくるのだ。
気持ちはとっても嬉しいが、それは少し難しい。
「昨日勉強してたろ?
それを先生に見せんの。
で、また次の事教えてもらって、終わったらお迎えに行くな」
帽子の上から頭を撫でる。
楽しいから誘ってくれる、その優しさがとても嬉しい。
流石に保育児に混ざる事は出来ないが、その気持ちを無下にもしたくない。
両親がそうしてくれたように。
きちんと受け取り、きちんと返したい。
「綾登、遥登もお勉強しないとなの。
夢を叶えるのに大切なんだよ」
「ん……」
「応援してあげようね」
「がっばってね」
「綾登のお陰でいつもよりやる気出てきた!
頑張るな。
で、早くお迎えに行くから待っててな」
「やくおく」
「約束」
ぱっちん、と大きな手にタッチしてから綾登は母親に連れられて保育園へと向かった。
小さな背中が何度も振り返り、手を振る。
「気を付けてな」
「あーい……」
寂しいのは綾登だけではない。
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