アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
48
-
花と月の美しい夜のデート。
くしゅんっと大きな音が響いた。
静かな夜のせいでどこまでも響いていくような錯覚をしてしまう。
「大丈夫か?
車戻ろうな」
「平気です…」
しょぼ…とした下がった眉。
きゅっと力の籠る手。
三条の気持ちが伝わってくる。
おおよそ、すぐに帰宅を進められると思っているのだろう。
くしゃみをするなんて身体が冷えたのかも、と喉まできているからな。
車に戻れば2人きりになれる事を喜ぶ三条が渋る理由なんて検討がつく。
「じゃあ、素直に奢られろ」
「え?」
「こっち」
手を引きもう少し先へと歩いていく。
どこへ?と不思議そうにしつつも素直に足を動かす良い子は甘やかさなくては。
安い事が売りの自動販売機へとやって来ると三条と手を繋いだままコートから財布を取り出した。
ここではICカードはほぼ使えない。
だけど、それが良い。
此処には此処の風があって、此処で生きている人達がいる。
無理矢理流行っている物を押し付ける必要はない。
作物も魚も生きる水が大切なんだ。
この人達が心地良い生活が出来ることの方が大切。
身体も大切だが、同じだけ心も大切にしなければいけない。
三条を見ているとそう思う。
なにかを強制するなんて、ただのエゴだと。
この子を守るためとストレスで雁字搦めにしてしまった。
自分でさえも、と。
「遥登ははちみつレモンな」
「ありがとうございます」
「ん。
どういたしまして」
手渡せば更に1歩近付いてきた。
餌付けっていうのは三条にも効果抜群らしい。
なににしますか、と言わんばかりの顔で見詰められ顔の筋肉が緩む。
やばい。
可愛い。
「俺もはちみつレモンにしよ」
ふにゃっとした笑顔はマスクをしてても隠せない。
言葉にする事もなく、長岡の考えが伝わったらしい。
「ありがとうございます」
「ゆっくり飲もうな」
「はい」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
48 / 499