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1歩先を歩く長岡は至極ご機嫌だ。
あの後、
「じゃあ、好きって言ってくれるか」
「……ここ、で…ですか?」
深夜で周りにも人がおらず、それを口にするのは簡単なのだが、問題はそこではない。
目がすごく楽しそうな事だ。
マスクから漏れている好奇心のワクワク感。
まるで悪戯をしている時の弟達のよう。
「そう。
カメラに向かって」
「カメラって…録画するつもりですかっ」
「するつもりですよ」
馬鹿ップルでも今頃しないだろ……という事を嬉々として言うんだ。
しかも、すっごく良い顔と良い声で。
この顔に弱いんだ…。
「はい、どうぞ」
スマホを構えた長岡は、どうぞとカメラに重なっていた顔をコテンと倒した。
サラサラと零れる1房の髪すら格好良い。
そんな人に改まって気持ちを伝える。
改めてだとすごく緊張する。
しかも外で、なんて。
そりゃ、外で露出プレイもしたけど……あれは俺もそういう気分だったし…………興奮してたし。
雰囲気に呑まれていたところあるし……。
とにかく、今とは状況が違うから緊張する。
「……あの…、正宗さんのこと……大好き、です」
ソワソワと目を泳がせてしまう。
違う。
言えと言われたから言うんじゃない。
「……正宗さん」
「うん?
どうした」
「俺の、1番は正宗さんです。
世界で1番……大好きです」
心からの気持ちを伝えたい。
言葉にするなら、きちんと手渡したい。
その方が嬉しいから。
長岡はとても嬉しそうな顔をして、俺も大好きだと返してくれた。
カメラを気にせず腕を掴み自分の方へと引っ張り、そっと抱き締めてくれた。
赤ちゃんを抱くみたいに大切に。
だけど、落としてしまわないようにしっかりと。
「すげぇ好き。
だから、ちゃんと愛されてろ」
「俺も愛したいです」
「ほんと。
そういうとこ…。
後でコンビニ行こうな。
桜餅買ってやる」
「一緒に食べてくださいね」
「あぁ」
そうして、コンビニへと向かっているのだ。
繋いだ手を引っ張ると止まって振り向いてくれる。
「どうした」
「んーん。
なんでもないです」
「ほんとか?
トイレとか大丈夫かよ」
「平気ですよ」
また歩みをはじめる2人の影が、駅前まで仲良く寄り添っていた。
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