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Vol.Ⅱ【2】
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小走りに店を出ていったバーチーは、
高校の同窓会へと向かった。
どうやら初めて付き合った元カノにも会えるらしく、
俺だけにはそのウキウキを隠さずに居た。
半年前に出来た彼女には、
真相は打ち明けていなくても、
同窓会ってだけで心配されて、
一時は参加を辞退するつもりだったらしいが。
結局、
バーチーのささやかな欲の方が勝ったようで、
昨夜になって同窓会があるからと遅番の交代を懇願され、
広い心で受け入れた俺である。
『なんだかんだ彼女とはラブラブなんだし、
羨ましい限りだねぇ…っと。』
さてと。
p.m.7:00か。
閉店まであと2時間。
今日中の仕上げは無いから、
とりあえず店頭に腰を落ち着かせるとするか。
駅から徒歩5分の位置にある店の窓の外を、
定期的に人波が大きくなったり小さくなったりしながら、
様々な人達が行き交う。
金曜日ということもあって、
普段よりも幾分みんなの顔が晴れやかに見える。
休みが不定期な俺は、
《ハナキン》て昭和な言葉に込められた気持ちなんて、
一生解らずに終わるんだろうな。
カウンター内の丸椅子に座り、
洋楽の有線の音量を少し上げて、
読み掛けの週刊紙の続きを読もうとページを探す。
途中にある、
某アイドルの水着姿をもう一度確認して、
元カノになんとなく似ているという事実を打ち消すように、
力強くページを数枚捲る。
すると、
大文字で書かれた見出しが残像として残り、
行き過ぎたページをUターンした。
『えっ!マジっ?』
お客様が入って来ない自動ドアを黙認してから、
その見出しの下に人差し指を当て、
右にスライドしていく。
『【人気ロックバンド《Crisis》のボーカル・刹那が、
ゲイをカミングアウト!】ぉぉぉ…?!』
えぇぇぇ…
俺の高校時代のカリスマが、ゲイだって?
ゲイってつまり…
男が男を好きになる同性愛者ってことだろ?
刹那って確かに中性的ではあるけど、
だからって意味解んねぇぇぇ…。
ここ数年は彼らの歌を聴くことは無かったけど、
それでも1度は憧れた人…。
¨Pata…¨
カウンターに突っ伏して、
読み掛けのページのことも忘れて身動き取れずにいると、
入店を知らせるチャイムが鳴り、
慌てて頭を上げた。
『いらっしゃいませっ!』
勢いよく立ち上がりすぎて、
膝を思いきりカウンターの足にぶつけてしまった。
『いっ!たぁぁぁ!』
『大丈夫ですか?』
『あっははっ、すみませーんっ。
全然問題ないですっ…っ?
あ、あれっ?』
本当は激しく痛む膝を堪え、
ようやくまともにお客様と面と向かうと、
その人はスーツのジャケットを脱いで左腕に掛けた青年で。
ジンジンする膝の痛みが引いていくのと反比例して、
ジワジワと思い出す僅かな記憶の中の人が彼と重なり、
同時にその人もハッとした表情をして見せた。
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